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武藤卓治と桐子は離婚した。
結婚したのは卓治が26の時、10年目の離婚である。
2人の間に子供はできなかった。
どちらに問題があるのかは判らなかったが、結婚生活が6年を過ぎる頃から、もうそれは諦めていた。
卓治としては、このまま一生、2人で生きていけばイイかなと言う思いだったが、お互いの気持ちは年々、はたで見ていても判るほど離れていった。
愛情は無くなり、干渉もしなくなったが、それでもお互い、相手のちょっとした言動に腹が立ち、口論になることも少なく無かった。
子供が出来ないと言うのも1つの理由なのだろう。
が、そんな生活が続いていたある日、突然桐子が
「離婚しましょ」
と言って来た時は、やはり卓治はショックはあった。
「こんな状態で一緒に暮らしててもしょうが無いでしょ」
桐子はいつものように、冷めた口調で言った。
それに対し
「そうだな、それがイイかも」
卓治もそう答えた。
確かに、なんの未練もないし、彼としても離婚は頭にあったが、ただ、先を取られたのが、なんとなく歯がゆく感じた。
それから2日後。
桐子は役所から貰って来た離婚届をテーブルの上に置いた。
お互いそれに署名すると
「明後日家を出るわ。荷物は…そんな大して無いけど、早目に取りに来る」
と桐子は言い、その通りそれから2日後、卓治の前から姿を見せなくなった。
数日たつと、彼女の服などの私物類は、いつの間にか無くなっていた。
平日昼間、卓治が仕事に出ている間に取りに来たのだろう。
(妻はココを出て、ドコに行くのか)
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