第一話 平凡な日常

1/9
前へ
/193ページ
次へ

第一話 平凡な日常

 桜が咲き誇る四月。  太陽が高く昇った頃、舞い落ちる桜の向かいのある公立高校にチャイムが鳴り響く。  静寂(せいじゃく)だった雰囲気が、生徒の活気な賑わいに覆われ、彼らはそれぞれ限られた自由時間を過ごしていく。  その中で、一人の女子生徒が軽い足取りで教室を出た。  彼女の名は、西山(にしやま)沙希(さき)。  十六歳。  ぱっちりとした大きな黒い瞳に色白な肌。  小柄な体で黒髪のポニーテールがよく似合う。  昼休みになると、沙希は食堂で仲良しの友人二人と一緒に昼食を食べている。 「なあ、今朝のニュース見たか?」  話題を切り出したのは()(やま)(りゅう)。  日焼けした小麦色の肌に、サイドとバックに短く切り込んだ黒髪。  雰囲気から活発そうな印象を与える。  陸上部に所属していて、足が速い。  明るく、男女問わず仲良しでクラスではムードメーカー的存在のこと、沙希の幼馴染でもある。 「見た見た。また枯れてたんだってね」  隆の言葉に返答する藍沢(あいざわ)莉央(りお)。  黒茶のショートカットで、前髪をヘアピンで留めている。  空手部所属で黒帯。  根っからの姉御肌で強気な性格をしている。  何事にも毅然(きぜん)としており、クラスの男女からは運動部の助っ人を頼まれるほど慕われている。  沙希の親友でもあり、隆と同じく幼稚園からの幼馴染。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加