10月①

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ここの自動車学校はスタッフ全員、左胸元に苗字が書かれたネームプレートを付けている。 彼はそのネームプレートを見てあたしの苗字を知ったのだ。 「俺、金沢さんの下の名前知りたいんだけど。」 首を傾げ、図々しくタメ口を利きながらあたしの返事を待つ彼にドン引きしたのは言う間でもなかった。 あたしの名前を知りたいだなんて、一体どういうつもりなのだろうか。 こんなところでナンパ? いや。もしかしたら、ただあたしをからかって面白がっているかもしれない。 「教習に関係ないことはお答え出来ません。」 高校生にナメられてたまるようじゃ、この仕事は務まらない。 あたしは心中とは真逆の、ここで鍛えられた営業スマイルを見せつける。 「名前くらいいいじゃん。ね、教えてよ?」 けれど、彼にはそれが全く通用せず、更に食らい付いてくる。
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