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「じゃ、またね。金沢さん。」
カウンターに並べられた書類達を手に取り、満面の笑みを浮かべながらそう言い残して彼は背を向けこの場を後にした。
なんなの、一体…。
あたし、完全にからかわれてるんじゃないの?
高校生からナンパとか、かなりありえないんだけど。
しかも。
彼の笑顔に見とれてときめいた自分がなんとも情けない。
自己嫌悪に陥りながら、溜め息をひとつついた時。
「金沢、高校生にナンパされちゃったわけ?」
クスクス笑いながら隣りの席からあたしに声をかけてきたのは先輩の門間紗季さん。
「紗季さん、笑い事じゃないですってば。」
巻き髪ヘアに雑誌で研究しているというフルメイク。
ネイルにまでしっかり気を遣っている紗季さんは、こんなちっぽけな自動車学校の事務は不似合いな気がする。
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