🔴魂のおくすり編 1 リーザは、森を彷徨い、祖母宅を目指す

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🔴魂のおくすり編 1 リーザは、森を彷徨い、祖母宅を目指す

 リーザは森の奥へと入って行く。  リーザの進む森は、魔使いの森と呼ばれている。  トーマ国に迫害を受けた、沢山の魔法使いたちが、この森に住んでいるからだ。  森は鬱蒼として、人がすんなり通れる道もない。  森の下草をかき分けて、リーザは森を進んでいく。    リーザは16歳の女の子だ。  1月前に母と父を相次いで、流行病で亡くした。  それで身寄りは、会ったことのない、魔法使いの祖母だけになってしまった。  祖母と母親は絶縁状態で、リーザは祖母の顔さえ知らない。  なのにリーザは、祖母しか頼るものがない。  そして、その祖母が、この魔使いの森に住んでいる。  リーザは不安だった。  祖母は変わり者だと聞いていたからだ。  どれほど変わった祖母なのか、リーザには想像もつかない。  そもそも魔法使いが、どんな人たちなのかも、リーザは知らなかった。    リーザは、どんどん森の中を進んでいく。  森を進む頼りは、リーザの首にかけられたネックレスに、ヘッドとして付けられた指輪だけだ。  リーザが指輪に祈ると、指輪は光り、光がリーザの進む方向を指し示す。  光の指す方向に向かって、リーザは進む。  順調に森の奥に進んでいく。    しかし1時間も進んだ時だった。  異変が起こった。    リーザの足元で鈴がなったのだ。  リーザが足元を見る。    鳴子だった。  鳴子が一斉に鳴り響いた。  リーン リーン リーン リーン  リーン リーン リーン リーン  リーン リーン リーン リーン    鳴子の音がリーザを包む。  鳴子の音は、とても澄んだ高い音色で、天に向かって昇っていく。  リーザは、鳴子の音を目で追う。  リーザは、天を仰ぐ。  リーザは、天を仰ぐと……、鬱蒼とした木々の枝葉の隙間から、わずかに青い空が見えた。  僅かに見える空に、動く黒いモノを、リーザは見つける。  逆光を浴びて、黒くみえる物体が、リーザにどんどん近づいてくる。  リーザが”アッ”と声をあげた。    黒い物体が、リーザの前に降り立ったからだ。リーザはそのモノの正体を知る。  
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