魂のおくすり編 2 黒い物体の正体は

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魂のおくすり編 2 黒い物体の正体は

 黒い物体は、黒い服をきて、箒にまたがる女だった。  見た感じ、年は30代頭で、細身で……、特徴として目立つのは鷲鼻だった。  鷲鼻ではあったが、不思議と美しく感じる顔立ちだ。    リーザはその女に聞く。  「あなたは……。魔女ですか?」  女は薄く笑った。  「私が名乗る前に、あんたから先に、名乗ってもらおうじゃないかァ」  リーザが戸惑いつつ、名乗った。  「私はトノエの村から来た。リーザです」    リーザの言葉に、女は眉を潜ませた。  「お前が、リーザか。それで、その指輪を持っているのか。リーザはその指輪をはめないのかい?」  「母にはめるなと言われたのです。これをはめると……」  リーザが押し黙る。  女がバカにしたように言う。  「母親から、指輪をはめたら、魔女になると聞いたんだろう?」  リーザは黙ったまま動かない。  リーザは、見知らぬ女の問いに、答えて良いものか、考えてしまったのだ。  リーザの固まった姿に、女がニヤついて、言う。  「安心しな。私があんたの祖母だよ」    リーザは驚いて、マジマジと女を見た。  「それにしては若すぎませんか?」  祖母は自慢げに言う。  「そりゃぁ、私は魔女だからね。若く保つ薬くらいあるんだ。私は薬の魔女だよ」  リーザはそう言うものかと思う。    祖母が尋ねた。  「でもなんであんたは、私の所に来たんだい?わたしの娘が、あんたがここに来る事を、よく許したね」    リーザが寂しそうに言う。  「母は、亡くなったんです」  「亡くなった?」  「ええ、亡くなりました。父も、母も、亡くなりました」  祖母は目を見開く。  「あんたの父さんも、あの子もかい?」  リーザは答える。  「父も、母もです。流行り病で亡くなったのです」    祖母はため息を付いた。  「人間の男なんかと結婚するからだ。魔女が流行り病で死ぬなんて、みっともない」  祖母がほうきにまたぎ直した。    そして言う。  「私の前に乗りな」  祖母に言われて、リーザがキョトンとした顔をした。    祖母は苛ついて言う。  「私のほうきに、一緒に乗りな。私の家に行くよ」  リーザは頷いて、祖母のほうきに乗った。  
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