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夏の終わり編 7 アイダの良からぬ決意
アダマスは当たりを見回した。
すると遥か遠くをリーザは歩いていた。
アダマスはアイダを置き去りにして、リーザの後を追う。
追いついて、アダマスがリーザに聞く。
「何で先に帰るんだよぅ。寂しいじゃないかぁ」
リーザが言う。
「二人でお取り込みだったから、私は関係ないと思って。それに……」
「それに?」
「これ以上帰るのが遅くなると、夕飯の支度が間に合わなくなるわ。そうなったら先生に叱られるでしょう?」
アダマスが聞く。
「夕飯かぁ。今日のメニューは何? 俺はリーザの作った料理が大好きなんだぁ。魔女の料理はまずいだろう? 魔女はたいてい、レンズ豆のスープばかり作るんだ。でもパパが料理人だったリーザの料理は、美味しいからなぁ」
リーザが笑って答える。
「かぼちゃと羊の肉包みのパイよ。後はジャガイモのポタージュね。生クリームをたっぷり入れるわ」
アダマスがうっとりした顔で言う。
「早く帰ろう。はちみつ水もくれる?」
「あら、はちみつ水でいいの? はちみつミルクティーでもいいのよ」
「え? いいの?」
「いいわよ」
「リーザ、大好き! 大好き! 大好き」
アダマスのウキウキは止まらない。
一方、アイダはキスされた唇を指で押さえて、地べたにしゃがみ込んでいた。
そして、仲良く家路につくアダマスとリーザを、アイダはジッと見ていた。
そして言う。
「私の唇を奪ったんだ。絶対にアダマスは手に入れる」
動けないままアイダは、しばらくその場でしゃがんでいた。
動けぬアイダが、アイダの影に向かって、自分の使役に言う。
「私を家に運べ」
そしてアイダは使役に運ばれて行った。
程なくして夕闇が大地を覆った。
――――夏の終わり編 おわり ――――次編 リーザの発見と竜の子守唄編――――
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