リーザの発見と竜の子守歌編 4 龍の願い 竜が、魔歌を止めてと懇願した。

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リーザの発見と竜の子守歌編 4 龍の願い 竜が、魔歌を止めてと懇願した。

 竜が、魔歌を止めてと懇願した。  「願いだ。また寝てしまいたくないんだ。もうしばらく起きていたい。やっと起きたのだ」  先生は困ったように言う。  「もう無理だ。リーザはもう止められない。大地のエネルギーを、既に体に溜めてしまったんだ。竜の子守歌、エネルギーを大量に溜め込むんだ。溜めたエネルギー身体から出さないと、リーザの命が危うくなる」  リーザは歌う。  エネルギーを沢山溜め込む種類の歌は、途中でやめられないのだ。  例えば癒しの歌。  例えば恵みの歌。  それらを(うた)いだしたら、止まれない。  すると、竜はドンドン小さくなって、人型に変わる。  そして人型のお年寄りになった。  白い長い髪の毛が、腰まであって。  長な長い顎髭が、膝の長さまであった。  腰は曲がり、杖を付いていた。  先生が言う。  「あんたは、だいぶ仙力が高い竜なんだね。人の姿に変化できるんだから」  竜が言う。  「そうだ。私は1000年竜だからな。しかも時間竜だぞ」  先生が感心して言う。  「1000年も生きたんじゃ、相当色々経験しただろう?」  竜が答える。  「ああ、そうだな」    リーザは、先生と竜の会話など、お構いなしだ。ただ歌い続ける。    竜を眠らせる子守歌を、とつとつと、悠然と(うた)い続けた。  清らかな歌声で、月のしらべのように。  たなびく、雲のように、歌い続ける。  先生が竜に問う。  「今から寝せられてしまうと言うのに、どうして人型になるんだい。人型の姿で寝たら、竜の姿で寝るより、危険だろう?」  竜が言う。  「竜であっても危険なのは同じだよ。大して変わらん」  竜がリーザに近寄った。  竜が、リーザの顔に手を伸ばした。  先生がそれを、魔法の杖で牽制した。  竜が言う。  「せめてその娘の顔をみせてくれ。顔も知らない者に、眠らされたくない」  先生が笑う。  「あんた、顔が見たかったのかい? リーザのサングラスを外すために、わざわざ人の姿になったのかい?」  竜があくびをしながら言う。  「そうだ。こうなってしまったら、眠るのは仕方ない。だからせめて顔が見たい。私を寝せる女の顔をみたい」    アダマスが言う。  「顔を覚えて、後で仕返しするつもりだろう? サングラスは外させないぞ」  竜が言う。  「うるさい!」  竜は、半分目を瞑りかけながら、最後の力を振り絞って、アダマスを跳ね除けた。  アダマスが、200メーターほどふっとばされた。  竜がアダマスに言い放つ。  「私は眠くて、もう、お前を食べる気力もない。だから、ふっ飛ばされただけで済んだんだ。ありがたく思えぇ……。あわぁ……」  竜は、ふらつきながら言う。  「顔をぉ……、みせてくれぇ……」  先生が言う。  「見せたら、その代わりに、あんたの髭をくれるかい?」  「髭? 髭がぁ……、欲しいのかぁ?」    先生が言う。  「ああ、髭をくれたら、リーザのサングラスを外してあげるよ」  竜は必死だ。  「仕方ない。髭をやるぅ……。やるから見せてくれぇ……」  先生がリーザのサングラスを外した。  竜が、リーザの顔を見た。  「ほう、そういう顔だったのかぁ」    サングラスを外されても、リーゼは歌う。  途中で魔歌は止められないのだ。  竜が言う。  「スミレ色の瞳。昔同じ瞳の魔王に会った事がある。惑わしのスミレ色の瞳。あいつは空を移動する島に乗って、今も旅をしているのだろか?」  先生が竜に聞く。  「その魔王に、何時何処で会ったんだい?」  竜が答える。  「確か、ああ、もう駄目だ……」  竜は寝てしまった。  先生が竜を見る。  「仕方ない。連れて帰るか。こいつには聞かなきゃならないことが出来た」  先生は杖で魔法陣を作ると、竜に向かって魔法陣を投げた。  竜は魔法陣のくるまれて、小さくなってしまった。  それを先生はポケットにしまう。  戻ってきたアダマスが言う。  「先生が始めから、竜を小さくしてくれたら、良かったのに!」  先生が言う。  「最初からこうしたら、保護獣の虐待罪になって、私は牢屋行きだろう? これはだね。こんな場所に寝てしまった保護獣を、保護をしたんだ。分かるだろう?」  アダマスが先生を軽蔑したように見た。  「ふん、詭弁だな」  先生が言う。  「時には詭弁が、大切なんだよ」  リーザが歌い終わる。  先生が言う。  「じゃ、行こうか?」  リーザが頷き。  2魔女と、1妖精は、大先生の家にと急いだ。  
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