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リーザの発見と竜の子守歌編 6 治療、すなわち瞼の裏に目を作る
治療を始めた、大先生の手が、どんどん熱くなる。
リーザは、手が火傷しそうに感じた。
「大先生、手が熱いです」
手の熱さが、瞼に飛んだ。
リーザが苦しむ。
「あぁ、瞼も熱い」
大先生が励ます。
「熱いのは我慢しなさい。リーザの瞼の裏に、目のようなモノを作っているからね」
リーザが尋ねる。
「瞼の裏に目など作ってどうするのです?」
大先生が説明した。
「私と手を繋がなくても、リーザが自ら自分の中身を見られるように、治療しているんだ。私の魔法で、目を作っているんだよ」
リーザが身をよじりながら聞いた。
「見えると、何か良いことがあるのですか?」
大先生が言う。
「だって、中身が見えなきゃ、ないのも一緒だろう? 見えたほうが良いんだよ」
更に高温になっていく。
リーザが呻く。
「あ、あ、あ……。熱いィ……」
数分熱さの中で、リーザは耐える。
大先生の手に、力がこもる。
「リーザも、自分の中身が見られたら、少しは自分の事が、分かってくるよ」
数分後、大先生が満足気に言った。
「目が出来た。けれど私は、疲れてしまったよ」
大先生が、リーザの手を離した。
リーザは、フラフラと揺れて、自分の目を押さえ、その場にしゃがみ込んでしまった。
もはや口も聞けない。
カンドル先生が礼を言う。
「治療して頂けて良かったです。大先生のお体が悪いから、今日は治療を諦めていたのですが……。お見舞いついでに、リーザに会わせるだけのつもりが、治療いただけるとは……」
大先生が言う。
「リーザを見たら、治療したくなったんだ。カンドルの孫は、私の曾孫同然だからね。いずれ私たちの魔法を受け継いでいく大事な子だ」
大先生がリーザに言う。
「リーザの瞳は、リーザの爺さんに似たんだね。惑わしのスミレ色の瞳。異性を惑わす、魅惑の目をしているんだね。そして、魔歌歌いは、母親似か……。リーザも難儀だね。何もそんな特殊なところを、わざわざ拾って似なくてもいいものを」
カンドル先生が言う。
「だから、魔法学校に行かせるのを、躊躇しているんですよ」
大先生が言う。
「そうだね。魔法学校はぁ……。でもどのみち行かないと、魔法の杖が貰えないからね」
カンドルが困り顔で言う。
「そこなんです。杖の問題がなければ、行かせないんですが……」
大先生が言う。
「まぁ、急ぐことはないよ。魔歌を使いこなってから、魔法学校に行く手もあるさ」
大先生が言う。
「さぁ、もう帰りなさい。そろそろ15時だ。家に帰る頃合いだよ」
カンドルが頷く。
リーザはアダマスに抱き抱えられて、やっと立ち上がった。
先生がほうきに、リーザを抱えて乗る。
先生が大先生に言う。
「ありがとうございました。また魂の薬を持ってきます」
大先生が言う。
「ワインやチーズも頼むよ」
先生がほほ笑んだ。
「お安い御用ですよ」
先生が飛び立ち、アダマスがその後に続く。
大先生に見送られて、カンドルとリーザとアダマスは、大先生の屋敷を出た。
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