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魂のおくすり編 6 魂の処理は素早くやりたいもんだ
すべての瓶に魂が捕獲されると、リーザと先生は、川から家に戻った。
そして魂が入った大量の薬瓶が、ところ狭しと、キッチンのテーブルに積まれた。
カンドル先生が言う。
「これから、魂を処理するよ」
リーザはまだ何かするのかと思って聞く。
「魂の処理? 処理って? 何をするんですか?」
カンドル先生が、魂の薬の作り方を、説明した。
「瓶に薬液を入れた後、瓶ごと茹でるんだ。茹で終わったら、地下に保管するんだ。10年寝かせたら完成する」
あまりにも長い年月がかかることに、リーザは驚く。
「10年?10年もかかるんですか?」
カンドル先生が、毒について説明する。
「そうしないと魂の毒が抜けないんだ。毒が抜けなきゃ使えない」
「魂に毒があるんですか?」
「あはははは。こっちが逆にリーザへ聞きたよ。毒のない魂があるのかい?人も獣も、魂に毒を持っているからこそ、成仏もしないで漂って、満月の夜に川なんかに集まってしまうんだよ」
リーザは黙る。
父母はちゃんと天国に行けたんだろうかと。
川をさまよっていないだろうかと、リーザは心配になった。
「さぁ、仕事をするよ。じゃないと魂の鮮度はどんどん劣化してしまう」
事前に仕込んであった薬液を、カンドル先生が、使役妖精を使って、地下室から出してきた。
薬びんの中の魂の動きは、川を飛んでいたときより悪くなっていて、蓋を開けてもすぐには逃げ出さない。
蓋をわずかに開けて、そこに薬液を注いで、また蓋を閉じて、針金を蓋が開かないように巻き付けた。
すべての瓶に薬液を注ぎ終わり。
大きな寸胴鍋に、薬瓶を入れていく。
最後に水をたっぷり注いで、薬液入りの魂の入った瓶を煮る。
「ゆっくり、1時間も煮たらできあがる。瓶が冷めたら、地下室の保管室へ置きに行くよ。それまで一眠りしよう」
カンドル先生が、屋根裏部屋にリーザを案内した。
こじんまりした可愛い部屋だった。
部屋には、リーザの母親の幼い頃の写真が、飾ってあった。
それに気がついて、カンドル先生が、慌てて写真立てを掴み取った。
「忘れていたよ。まだ飾ってあったんだ」
カンドル先生は、写真立てを持って、屋根裏部屋から出て行ってしまった。
リーザは、屋根裏部屋の小窓から、満月をみた。
「今日は色々ありすぎた」
リーザは貰った箒を枕元に置くと、深く眠った。
とても疲れたのだ。
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