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サプライズ!
20歳の夏。
私は今日、人生初のサプライズを決行しようとしていた。
いつもより不自然に膨らんだリュックを背負い、夏休みで混み合う改札を出る。
都内の駅から十分ほど歩き、見慣れた住宅街に進んでいく。
去年の夏から家庭教師のアルバイトを始めてから、大学の帰りにこの住宅街を通って、奏翔くんの家へ向かう。
母親の古くからの友人の息子で、私の通う都内の国立大学を志望していたことから、私に家庭教師の依頼がきた。
受験勉強から解放されたのに、また受験勉強のことを考えるのは少し嫌だったが、アルバイトとしてお金が貰えると聞いて、とりあえずやってみることにした。
嫌になったら辞めればいいと軽い気持ちで始めたくせに、気が付けば一年経っている。
お給料がいいから続けていると周りには笑いながら言っていたが、実は違う。
新田光葉という名前に、新しく「光葉先生」という名前が加わり、ようやく自分の本当の名前を知った気がした。
私にとって奏翔くんは、生徒でありながら恩師のようなものだった。
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