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「だからさ、とりあえず生きてたって言っておいてよ」
「幽霊なのに?」
「……確かに」
「あんまりその姿で笑わないで、怖いから」
「ごめんごめん」
血の涙が流れていた。
「さて、ひと仕事して来ますわ」
腰を上げる姉にひとつ聞きたいことがあった。
「あのさ、占い師の家から帰って来た時、変わった匂いがしてたんだけど、なんだったの?」
結局、当時も聞いたが教えてくれなかった。
「ああ、ヤバいモノだと思ってたんだっけ」
幽霊姿で不気味に笑った。
「作業効率が上がるとかで、先生が好んで使っていたただのお香よ。変わった匂いの犯人はたぶんクローブ、料理にも使うよ。安心した?」
「ーーうん」
「あのお香ね、私も嫌いだったわ」
「そうなの?」
「だって、歯医者さんみたいな匂いがするんだもの」
思い起こせば、確かにそんな匂いだった気がした。
「じゃ、みんなによろしくね」
姉がドアを開けると男女の叫び声が聞こえた。
「すごい声だね。幽霊姿のお姉ちゃんよりあの声の方が怖いな」
「当たり前よ。生きてる人の声って強いのよ」
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