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隣町のお化け屋敷で、七年前に失踪した姉を見たと幼なじみの賢人が家に押しかけて来た。
「それ、本当にお姉ちゃんだった?」
「間違いないよ。俺の顔を見て一瞬、『あ』って口を開いたもの。あれはぜったいにみーちゃんだって!」
賢人は姉、美弥の名をみーちゃんと呼ぶ。
「さっさと帰ってくればいいのよ」
「ーーそれが出来るひとじゃないだろ。それは真希が一番分かってるじゃん」
「失踪中にお化け屋敷で遊んでるって……」
「違う違う! 客じゃなくて、お化けの方!」
「え?」
「働いてるんだよ!」
「はあー?」
家族の間で、いっそ失踪宣告でもすれば、慌てて家に帰って来るのではないかと半ば本気で話し始めていた頃だった。姉がカップルを驚かせている様子を想像して、背筋がぞくりとした。
「お姉ちゃんのお化け、怖すぎるでしょ」
「リアルすぎて怖かったよ」
✳︎✳︎✳︎
姉は子供の頃から破天荒で、家族はそれに迷惑しながらもどこか面白がっていた節がある。姉は興味があるものにのめり込むあまり、そのものになりきってしまう厄介な性格だった。
それが顕著に現れたのが、姉が中学生になったばかりの頃だ。少年漫画のバトルシーンに憧れて突然、髪の毛を金色に染めた。言動も荒々しくなり、クラスメイトともトラブルが増えた。それまで、とくに目立つタイプでは無かった姉の突然の変化に慌てた担任教師が、家庭環境に何かあるのではないかと面談を希望してきた。
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