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「お姉ちゃんはずっとドラマの主人公みたいに波瀾万丈な生き方してると思うよ」
「それもそうか」
久しぶりに見た素の姉の笑顔だ。
「今は誰かの人生を変えてしまう人になりたいの。あの時の先生みたいに」
「でも他人の就職に口出すのはやり過ぎだよ」
「あれは、パワハラとか問題のある会社だったんだよ」
「占い関係ないじゃん!」
「そう言わなかったっけ?」
占い師へのマイナスイメージが事実を歪めていたのかもしれない。
「役者で稼げるようになったら私がサロンを開くの」
「え?」
「私、劇団員をしてるのよ。このバイトも演技のため。これ、次の公演のパンフレット」
「この人……」
劇団の主催者は白髪になっていたが、どう見てもあの占い師だ。
「先生はね、魔女なの。こうしたい、こうなりたいって思い込んだものになれる魔女」
「……なにそれ、怖っ」
「怖いよね? 占い師にもなれたし、劇団だって作れちゃう。先生が一番の役者なのよ」
姉の目は、もう夢みがちな少女のものではなくなっていた。
「どうせ演じるなら、もっと大勢の前でしようと決めたの」
姉は相変わらず自分で決めたことを突き進む。
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