お化け屋敷のヒロイン

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「は? 主役癖って何ですか?」  担任教師の狼狽ぶりは相当なものだったらしい。真面目な性格の彼は少年漫画を読み込み、姉の信頼を得ようとしたがあまり上手くいかなかった。 「待ちなさい、その怪我はどうしたんだ!」 「ふん、かすり傷よ」  そんなやりとりがあったかどうかは定かではないが、主人公になりきった姉は強かった。近所の不良との闘いに勝ち、ある日、中学校一強い柔道部の女子に戦いを申し込んだ。 「へえ、あなたが……。えっ」  姉が口上を言う前に女子部長に倒されたことを酷く悔しがっていた。 「不意打ちよ! もう一回!」  姉は何度も挑んだという。 「筋は悪くないわ。あなた、入部しない?」  姉は金髪をやめ、柔道部に入部した。両親と姉の担任教師は手をとって喜んだが、私には全てが茶番に思えた。 「最初から柔道部に入ればよかったのに」  姉は分かってないと首をふる。 「主人公は挫折を知って強くなるものでしょ?」  私が、あちこちにある擦り傷やあざを見るのをうるさそうに手で払った。 「あんた、ちょっと地味だけど利口だしそこそこ可愛いから、ヒロインの妹にぴったりだよね」  思春期特有の病なのだと私は認識した。そうでなければ、いつも誰かに向けて演じるようにふるまっていた姉が怖くて仕方がなかったからだ。
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