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「普通の男とは合わないわけよ」
単に恋人か好きな人にフラれ、手相占いに頼っただけらしい。
「それでね、運命の人に出会う方角と日時を教えてもらった」
指で挟んだメモをひらひらと揺らしてみせた。
「手相占いでそこまで分かるの?」
「冷めたふりして興味あるんじゃない」
「ーーそうじゃないけど」
インチキなのではないかと口に出しそうになる。そんなことを言ったら袋叩きだ。
「それでね、方角と日にちを当てはめたら、行く予定の就職説明会の会場がある辺りだったの」
この時は、失恋のショックが和らぐのならそれでいいと思った。
「そこで新しい出会いがあるかもね」
姉は嬉しそうにメモを見つめていた。この時、もう少し真剣に姉の話を聞いていれば、その後に起こる悲劇を止められたのかもしれない。でも、私は姉の特殊な性格を分かっていたつもりでいて、実は人一倍臆病で傷つきやすい人間だと気づいていなかった。
姉は手相占いの結果を神のお告げかのように思い込み、その占い師に夢中になっていった。
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