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人のために奉仕する仕事には絶対就かないと思っていた。
「だから、勉強っていうのは……社会のルールとかマナーのことよ」
こんなに歯切れの悪い姉は初めて見た。
「あまりしつこいと怒るよ」
そう言って自室へ入った姉からは、今日も変わった匂いがした。
同じ高校に通う、同い年の賢人は良い相談相手だった。
「占いの館とかってお香焚いてたりするじゃん」
「賢人、占いの館なんて行くんだ」
「……彼女に連れて行かれたんだよ」
「えっ、彼女いたんだ」
「それは別にいいだろ。笑うな」
「ごめんごめん。そっか、確かにそんなイメージある」
「分かんないけど、神秘的に魅せるためなんじゃないの」
「でも、なんか嫌な匂いなんだけど……まさか、変なハーブじゃないよね?」
「まさか」
賢人は笑い飛ばしたが、私は妙な胸騒ぎがしていた。最近、大学生が禁止薬物所持で捕まったと報道を見たばかりで、その薬物は独特な匂いがするらしいと知ったからだ。
「みーちゃんだって、流石に善悪ぐらいはあるだろ?」
姉だからこそ悪に染まることもあり得る気がした。
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