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次の土曜日の午後、私は姉のあとをつけて行った。占い師の自宅は駅前からすこし離れた住宅街のはずれにあった。想像していた禍々しさはなく、白い洋風の建物は、まるでドラマに出て来るアーティストのアトリエのようだった。色とりどりのバラが咲く庭で、白いブラウスを来た中年女性と楽しげに笑う姉が見えた。占い師というよりはマナー講師と言った方が納得がいく風貌だ。姉は、占い師に言われた通りにテーブルにティーセットを並べている。他にも若く華やかな女性がいて、姉に何かアドバイスをしているように見えた。姉はもしかしたら念願であった物語の主役になれているのかもしれない。それに、禁止薬物を使用している風には見えず、私は姉に気づかれないうちに引き返した。姉は、この場をサロンと呼び、私も勉強会に連れて行ってあげると自慢げに言った。
それから三ヶ月は、表面上は穏やかに過ごしていた。直接、姉に占い師について聞くことを皆が避けていたからかもしれない。
ある日曜日、夜更かしのせいで昼前に起きるとすでに姉の姿が無かった。
「……お姉ちゃんは?」
「今日も出かけてる」
母は洗濯物を片付ける手を止めた。
「面接?」
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