04. ――錬成反応。術式発動。

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 そこまで言って、ルツはハッと気がついた。  ここへ来たとき、アルスはなんと言っていた? 『協会長から全部聞いた! 僕の記憶も想いも奪っておいて、こんなの絶対に許さないし認めない……!』  協会長と、はっきり言っていた。でもルツは自分が錬金術協会に通っていることをアルスに言ったことは一度もない。それなのに。 「ルツには言わないでって、僕がお願いしていたんだ。君は僕に錬金術を教えなかったけど、僕はどうしても学びたかったから」  アルスの告白を聞いたルツは天を仰いだ。彼が錬金術に手を出していたなんて、全然気づいていなかった。まさか二百年も生きている自分が、十八年しか生きていない少年に遅れをとるとは。  同時に、アルスが記憶を取り戻している理由もなんとなく察しがついた。彼が錬金術師であるのなら、ルツが施した錬成にある程度抵抗できてもおかしくはない。もちろん能力的にはルツのほうが上であるため一時的には上手くいったのだろうが、二週間経った今、アルスがそれを打ち破ったのだろう。  悲壮な顔をするルツの手をアルスが取った。ぎゅっと握りしめられて、ルツの心臓はまたもや不自然に軋む。 「ねえルツ。僕を巻き込んでよ。僕は君となら死んでもいいし、君とならこの先もずっと一緒に生きていたい。結婚できなくてもいい。子供ができなくたって構わない。君の愛を僕だけに向けて欲しいなんてもう言わないから、だから」  だからどうか、一人で全部を背負ってしまわないで。一人で消えてしまおうとしないで。これからは僕が一緒にいるから。  そう訴えるアルスの真摯な声と眼差しは、目を逸らしたくなるほどに一途で。耐えきれなくなったルツは、ぎゅうと強く目を閉じてその視線から逃れようとした。 「ルツ、お願いだからこっちを向いて。僕を見て」  それでも、アルスにそう言われてしまえば目を開けるしかなかった。そっと瞼を開けば、そこには抜けるような蒼天を思わせる瞳がこちらを見つめている。
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