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「好きだよ、ルツ」
「…………」
「本当に、君のことが大好きだ。だからどんな結果になろうと、最後まで君のそばにいさせて欲しい」
挨拶と同じくらい聞き慣れた好意の言葉に、今回ばかりは以前と同じ反応を返すことができなかった。ここにきて、ようやくアルスの本気を理解してしまったから。
それに本当にもう、時間がないのだ。こうして押し問答を続けている間にも、国中で人々がバタバタと倒れていっているのだ。ルツもアルスも引く気がない以上、答えはひとつしかなかった。
向かい合って立っていた二人は、手を繋いだまま並んで立つ。それがアルスに対するルツの答えだった。
──錬成反応。術式発動。
二人の体から光があふれる。ルツが展開させる高位浄化錬成に、アルスが合わせる。
「くっ……!」
「…………っ」
全身にのしかかる強い負荷に、ルツが小さく呻いた。アルスも唇を噛みしめる。二人がかりであるにも関わらず、今にも体がバラバラになりそうな感覚に吐き気がした。
それでも、ここで吹き飛ばされるわけにはいかない。ルツは必死に踏み留まる。いま吹き飛ばされればアルスも巻き添えになるのだ。
繋いでいた手を強く握る。そうすれば、アルスも強く握り返してくれた。
二人を包む光がますます強くなっていく。ルツとアルスを中心に、世界がなにかに包まれていくような感覚。そして。
「ルツ!」
焦ったようなアルスの声を最後に、ルツは力尽きてその場に崩れ落ちたのだった。
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