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05. 変わってゆく二人
意識が揺蕩う。どこかでルツを呼ぶ声が聞こえた。懐かしい声。ルツを生み出した錬金術師の声だ。
『ルツィオーネ。いつか本当にお前を愛する人が現れて、お前もその人を愛するようになったとき、お前は真実人間になれるだろう』
『……愛? そんな不確かなものより、術式を教えてください』
『ふ、わたしの娘にしてはつまらんことを言うな』
ルツはぎょっとした。たぶんこれは自分の過去の記憶だが、まったく覚えていない会話だった。
『お前を人間にするための術式はあるが教えん。これが最後の課題だ、ルツィオーネ。その機械仕掛けの心臓に刻まれた術式を解き、真実人間になってみせろ』
最後の課題。……ああ、そうだ。この会話のすぐあとに、ルツの生みの親は死んだのだ。
機械仕掛けの心臓がまた軋む。ついに壊れる時がきたのだろうか。現存するどんな武器の攻撃も効かない心臓だけれど、さすがに自爆まがいのことをすれば壊れるだろう。
そういえば、アルスは無事だろうか。ああ、せめて気を失う間際に、繋いでいた手だけでも放しておけば良かった。あんなに強く握っていたから、きっと逃げられなかっただろう。ごめん、ごめんね。
『──ツ! ルツ!』
またどこかから声がして、ルツはあふれそうになった涙を拭って上を見上げた。意識の向こうから声が聞こえる。さっきとは違う声。アルスの声だ。良かった、無事だったらしい。
「…………?」
不意に、唇になにかが触れる感覚がして、目を見開く。体温を感じるなにかが、優しく触れている。
光があふれた。錬成反応によく似たそれに、ルツはハッと目を覚ます。
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