04 振り上げた拳

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「じゃ、まず手続きしなくちゃ!  ピノちゃんの歳はいくつかな?」 奈留が、そういうとピノが元気よく返事をした。 「ピノ15歳だよー」 「じゃ、中学生だね。  んー、学力ついていけるかな?」 奈留が心配そうにそう言った。 「まぁ、なんとななるんじゃないかな?」 壱は、そう言ってケラケラと笑った。 そんな様子を由香が静かに見ていた。 その表情は、どこか淋しげで不安げだった。 そんな由香を見て壱が声をかける。 「由香ちゃん、どうかした?」 「うんん、なんでもない」 「うん?」 由香は、少し泣きそうになりながら壱と奈留に尋ねた。 「私のお姉ちゃんももう少し早く壱さんに出逢っていたら死ななくても済んだのかな?」 壱の表情が曇る。 「どうだろうね……  そればかりはわからない」 壱は、静かに首を横に振る。 「だって、お兄さん強いんでしょ?  だったら、ママを壊したアイツを――」 由香が、ボロボロと涙をこぼす。 壱は、優しく由香の体を抱きしめた。 壱は、由香がどんな扱いを受けていたか知っている。 いや、詳しくは由香の姉、橘 理香の境遇だった。 理香は、由香をコインロッカーに捨てそのあと、実の母親である橘 静に殺された。 実の父親が、どこにいるかはわからない。 父親は、静の浮気を疑い。 そして、去ったということだけ知っている。 父親が去ったあと武田 武という男と母親が再婚。 その後、理香は、武による度重なる虐待を受けていた。 理香の遺体には日常的に虐待を受けたとされる跡が残っていた。
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