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先ず最初に書いておきたい事は、Fの夢は完璧だって事。  Aはダメ。治氏もキライ。  だって現実がイヤで漫画に逃げるのだ。何を好んでディストピアやらブラックユーモアなんぞを読む理由があるのか。気分が落ち込み泣いてしまう。  その点Fの夢は完璧。ある日突然に狸型ロボットがやってきて世話をやいて甘やかしてと、いろいろ良くしてくれるのだ。未来の道具をボロボロ渡しておいて何と叱ってさえくれるという。  ああ、何という優しい未来だろう。何という明るい未来だろう。短編?そんなものは知らん。私は読まん。ソレきっとAが描いたんだよ。だってFは私が落ち込む様な漫画は絶対に描かないはずだから。  とにかく優しい未来。優しい現在。ノブタがいて、ドコエモンがいて、ジェイアンがいて、ヒネオがいて、シズエには一言も二言もあるけど、そんな世界。  キラキラした未来。愛おしい未来。  Fが提供してくれる安寧な世界に没頭するのが私の生活。あとはそれ程多くない、妹の事、仕事の事、家事の事、それくらい。それくらいだった。  だから、私の住む街に『ミライのタマゴ』なるものが出回っているらしいなんていう噂を聞いた時、世界が再び、ぐるぐるとまるっきり変わってしまうような、とてもイヤな感じがした。 ルール 一つ、ミライのタマゴにお願いするとタマゴからミライジンが産まれる。 一つ、ミライジンはそのお願いと引き換えに何かを奪って消える。 一つ、その跡には、タマゴが2つ置いてある。 注意点 一つ、ミライのタマゴやミライジンは街の外に出せない。 一つ、お願いの大きさに応じて奪うものも大きくなる。 一つ、身体に触れているものしか奪われない。 一つ、何か持たないと身体から奪われる。  職場でもプライベートでも強いて友人を作る事はしない私すら、使用する条件と共にタマゴを手に入れられたのだ。既に街中に拡がっているのだろう。  タマゴについての詳細は、使用していく中で得た知識か、最初に渡された誰かが贈り主から聞いたのか。  とにかくこんな忌まわしいものに妹が決して触れる事のないよう、重々注視していかねばならない。
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