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06
モテスギ君はやんわりと、でも確かにハブられている。彼の方にも、きっと問題はあるのだろう。
だってどうだ、私なら躊躇なくシズエをアウトしてモテスギ君をインである。物語の都合を考えても博士役は必要だろう。びっくりしたり解説したりする人。現実ではどうだか知らないが、漫画には必ずいるものだ。レギュラーメンバーの構成で考えればドコエモンは結構尖っていると思う。なんてったってポンコツと名高いドコエモンが賢い方のメンバーなのだから。
道具の解説だけはドコエモンが担っているからまだいいとして、それが常識といかに解離しているかの補足や、何よりもレギュラーメンバーにはびっくりする人間がいない。三馬鹿+シズエは未来の道具に対して少し慣れ過ぎると思う。はしゃぐリアクションが普通というか、トンデモを見過ぎて麻痺してしまっているのだろうか。ヒネオの金持ち自慢の方がまだ良いリアクションをとるように感じる。
モテスギ君、いてもいいよなぁ。レギュラーにインして然るべき人物。しかしそうならないのであれば、それはつまり何か理由があるのだ。
落ち着き過ぎていてダメなのだろうか。確かに三馬鹿とノリは違う。指差して小馬鹿にしたりはしないだろうが、ノブタをナチュラルに見下してそうではある。そういうところなのかもしれないが、それでも八方美人でどっちつかず、あくまで空気を読んで行動するシズエよりは随分マシだろう。と、いうかシズエの性格をもう少しモテスギ君に寄せてしまえばよかったのでは?賢く自立した女の子。だとしたら結婚理由にも整合性がつくじゃないか?ダメダメなノブタを「最悪養う」と見捨てられない。あダメだ何か腐臭がする、幸せな未来が全然みえてこない。ダメだダメだ。
話を戻すが、モテスギ君は『ぼっちが平気』な人間なのだ。みんなに優しくて誰とでも上手くやれるが誰にも全ては晒さない。一通りなんでも熟すが、何が好きなのかを誰も知らない。自分がソレを好きなのは自分だけが知っていれば良いと考えていて、共有して語り合ったりする事に必要性を感じない人間。趣味に没頭したいので誰とも衝突したくない人間。オタク気質なのだろう。何でも出来て人当たりが良いので蔑まれたりはしないが、心の友と呼ぶような人もいない。かわいそうに、孤独な人間なのだ。もっと心を開けばいいのに。
まあ私からすれば趣味に没頭して満足な人間なんぞ、単に『付き合いにくい人』なので、現実世界にもしもそんなヤツがいたとして遊びに誘ったり仲間に引き入れたりはしないだろう。でもそれはそれ、漫画の中にはよく登場するじゃないか、何かに没頭しているぼっち。そして、そういったキャラクターの心の扉をこじ開けるのは、面倒くさい話にもうんうん頷き、いくらでも話を聞いてくれる主人公なのだ。
ならば、モテスギ君のオタク趣味はオカルトか?なにしろ映画版ドコエモン『魔境大捜索』の時の語りは見事なものだった。軽い感じで「魔法ってあるの?」なんて尋ねたノブタに対し延々と長広舌をブチかまし、なんだったらノブタが少し引く程の熱量で錬金術や魔女狩りにまで話が及んでいた。ノブタがわざわざ聞きに行っていた辺り、オカルト好きについては、もしかして公言していたのだろうか?友達云々よりも気味悪がられているだけなのかもしれない。ノブタが話を聞きに来た時、顔には出さずとも超うれしかったろうなぁモテスギ君。
そして、魔法についてあれだけ熱く語っていたのにも関わらず、以降その映画への出演なし。尚もあの三馬鹿には加わらない。
彼はきっと『分かっている』のだと思う。
何かを分かっている。その何かは例えば自分はあの友情の輪の中に入っていけないという事や、遊んだとしても心の底からは楽しめない事。あの三人の中に踏み込んだら、自分の優先事項をずらさなければならなくなってしまって、それはとても困る事などである。
面倒くさ。
つまり誰よりもモテスギ君をハブっているのはモテスギ君自身であり、彼は自分にとっての幸福を優先するために、あるいは方正となる選択肢を『見ないふり』出来る人間なのだろう。
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