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 ドコエモンは、ヒーローではない。  少なくとも、困っている人を全て救おうなどというロボットではない。それはドコエモンという物語からしてそうで、勧善懲悪でもなければ、揉め事すら解決しないまま終わる事もある。精々が善人といったところ。ロボットとして余りにも人間らしく、なんというかイイ性格している。  あくまでドコエモンは使命に動くロボットで、大飯喰らいな居候で、寄り添うだけの友達で、ノブタすら必ずは助けない。  全てのミライの道具の中で、最も完成度が低いといえるだろう。命令を忠実にこなせない夢の機械。  心のせいだ。  感情のせいだ。  そんな訳の分からないものを組み込んだ故に、かの狸型ロボットはかくも残念である。  製造時点で彼は同商品とスコシ違った挙動をみせていた。道具を出すのもうまくできない、規格から外れた商品。すわ廃棄といったところで、セカラシが買い取ったエピソードが語られている。  であれば彼だけ特別なのかといえばそれは違って、後継機であるドコミにも普通に感情のようなものが組み込まれている。つまりは単なる欠陥品なのだ。心を持つロボット『ドコエモン(四次元ポケット付き)』という型番の中の欠陥品。即ち機械版ノブタこそが彼である。  他の道具にリテラシーは組み込まれなかったのか。あからさまに危険な道具が蔓延するミライ。ごくあっさりと人の尊厳を踏みにじりうる機械がありふれたミライ。ドコエモンすら、激昂してノブタに掴みかかったりする。ジェイアンの暴力に怯え、ノブタを守らない。  何よりも、あの世界にはミライのロボットはドコエモンしか存在しない。映画などにはわずかに登場するが、私が言いたいのはそういう事ではなく、セカラシ程度のモチベーションでドコエモンを過去に送れるならば、もっとありふれていて然るべきという意味である。  誰しもより完璧な自分でありたいだろう。生まれた時から優等生になりたいだろう。セカラシが倫理もなく、また極端にアホである可能性はあるが、それにしたところで誰か他の人間がロボットを送り込んでくるはずである。そもそも犯罪行為であったとしたらドコエモンがジクウパトロールの目を掻い潜れる訳あるまい。普通に会話してたし。  他のやつが誰もロボットを過去に送らない事が、私にとってスコシでないフシギ。  分からない、理解できない。  タイムマシンが、ドコエモンの派遣が、改変がごく一般に行われないミライ。  スコシフシギなミライは、下衆な読み手であるところの私、私にとってはその世界観こそがスコシフシギであり続ける。  依然として考察の余地あり。隙だらけの世界。  考える、考える、考える。  たくさんたくさん、考えて。  ひとつ、全てのフシギを解消するアイデアが浮かんだ。
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