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03
私の理想の男性はジェイアンである。
こんな事を迂闊にいうと、大抵「映画のジェイアンは優しくてぇ…」などと私に要らんバトルをふっかけてくる馬鹿がよくいる。オマエいっぺんでもドコエモン読んだ事あんのかと言いたくなる。映画じゃねぇよ、普段のジェイアンが優しくないなら何なんだよと酷く神経に障る。
ちょっとからかうとすぐ虚言妄言を垂れ流し挙句に泣いて帰ってしまう愚図と、親の金しか自慢のタネがないイヤミなボンボンだぞ。一回遊んだら二度と誘わんわ。虚言の方とかドコエモンの所為で未来道具使って襲いかかってくるし。訳が分からん。
察するにノブタとヒネオは、ジェイアンしか友達がいないのだ。懲りもせず構ってくれるガキ大将に対して、嫌な顔をしながらも依存しなければ学校生活をまともに送れないのだ。ノブタが他の誰かと複数回遊んだか?ヒネオが他の誰かと密な友情を構築しているか?私だったらノブタの友達になどなれない、ヒネオだってモチのロンでネバーである。しつこいようだがあの2人と友達で居続けられる人間などジェイアンをおいて他にないだろう。
ノブタとヒネオ、互いが互いに対して友情を感じているかも怪しい。所詮ジェイアンを介してのみの間柄なのではないか?卵かけご飯の納豆トッピングのようなものである。納豆卵だけズルズルと食べ続ける訳にはいかないのだ。やはりジェイアンというお米がなければ。そして栄養は無駄にする、そんな関係。ジェイアンが繋ぎ止めているのだ、彼らと社会を。ジェイアンがガキ大将だからこそ、彼等2人はイジメを受ける事もなく、ありのままの醜態を晒しているのである。ジェイアンが彼等2人を社会に引っ張り出している。それはすなわち、彼の人間力の高さを証明しているのだ。
骨河さん合田さんトコの奥さんは仲が良いように感じる。ある程度の協定と合意、何よりジェイアンとヒネオの関係性について理解がなければ、定期的にオモチャを奪われて泣いて帰ってくる愛息にとてもじゃないが気が気じゃいられないだろう。方々で子供を泣かせて回る困ったガキ大将を糾弾するに違いない。そうしないという事実が、何か親同士で上手い協定めいたものがなされている証左である。野部家の奥さまは入れて貰えてなさそう、ソレはホントに何となくだけど。
とかく槍玉に挙げられるリサイタルや、何やかんや暴力的である事についても何の問題があろう。彼はまだ毛も生え揃っていないような、ほんの子供である。高学年とはいえ小学生である。可愛いもんじゃないか。『歌手になりたい』なんて、一生懸命自分で衣装まで準備しちゃって。小学生が歌手になりたいというだけの、たったそれだけの事。付き合わされている子達にとってはどうにかすべき問題ではあるだろうが、ただ覗く事でしか関わりをもたない我々読み手がわざわざ切り取って嘲笑するような事ではない。そして、矢張りというか、母親が確りとストッパーとして機能しているからこそ大きな問題にもならないのだろう。
ジェイアンは音痴で暴力的なガキ大将。そんな表面的な部分のみを殊更に取り上げて、彼の繊細さと包容力、人物像に目を向けようとしない奴等は、おそらく幼少期から夢などみないつまらない人間なのだ。私のような理解者からすれば映画版ジェイアンの優しさにこそ薄っぺらな印象すら持つ。
歌手になりたいという彼の大いなる野望と、どうしようもない音痴という特性について、彼が大人になるまでの何処かで何か残酷な目に合うのだろう事を想うとととても心が痛む。しかし、彼は必ず立ち上がる、間違いなく立ち上がる。それは未来によって既に決定されているのだ。商店街の中にある小さな店から、大きなビルディングを建てるまでにのし上がる。大した立身出世である。ノブタが火事に遭った会社も、ジェイミィと結婚していた未来であるならば、妹を可愛がる余り立ち上げたチェーン店のひとつであったのではないか?なんていうつまらない空想は置いておいて、とにかく夢を捨てた彼の仕事ぶりは凄まじい。歌手はまぁ……金持ちの道楽で自主制作かな。未来の部屋に貼ってあったポスターとかもまぁ、ねぇ?
えっとそれで、さんざっぱら暴力を振われたノブタとヒネオが大人になってからもジェイアンとの付き合いを絶っていない事こそがつまり、彼の人間としての成長を確約する約束された未来。結論、みんな彼の事が好きなのだ。
所詮人間はギブアンドテイク、それは何も金銭に関わる話だけではない。貴方と一緒にいると気分がいい。関係が途絶えるのが心苦しい。繋ぐ為には、良くしてやらねばならない。一緒にワイワイ楽しくしたい。友情、それは一方的なものでは決してない。双方向に繋げる為の手段として、金銭という道具あるというだけ。ジェイアンとノブタとヒネオ。皆が上手くやった未来では、何のわかだまりもなく、皆、嬉しそうにノブタの結婚を祝福しているのである。心が洗われるような美しいギブアンドテイクだ。
何度も言うがノブタとヒネオ、とかく問題行動が目立つ2人を社会と強く結び付けているのはジェイアン。間違いないと思う。もちろん時代もあるのだろうが、方法はどうであれ自らの名を冠する草野球チームを設立する程度の人望と、隣町の少年達や中学生との試合を設定できる程度のマネージメント能力を併せ持つ彼である。彼が大人へと成長していく過程で、暴力という幼稚な手段を捨てた時、真に強いリーダーとなる事もまた約束された未来。そんな彼に私は強く惹かれる。将来性ではない、ノブタとヒネオを引っ張り回せているところに、である。
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