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04
ヒネオは理知的。それだけはホント、間違いない。
彼の口先から放たれる自慢話はいつだって私の心を鷲掴みにして、頭の中に未だ見ぬ情景をありありと映し出す。
話が上手いのだ、内容はともかく。
彼の父親が事業を成功させている事も頷けるし、その血が彼に確実に受け継がれているであろう事に疑いはない。浄不浄は別にして彼は成功するだろう。それも、約束された未来である。
彼の立ち回りが好きだ。彼の尖った口先は、いつだってドコエモンから未来道具を引っぱり出す。彼は起承転結の起の部分なのだ。私を夢の世界に連れ出してくれる事件の起こりを、彼はいつも担ってくれる。彼のおかげで、私はうっとりとドコエモンに浸れる。
ジェイアンと同じ。彼も大人になるまでの何処かで、これではどうにも上手くいかない事に気が付き、挫折して、他者と良好な関係を育む術を学んでいく。大人になっても空回りしているのはノブタだけ。
考えるに、そう、決して妄想などではなく、あくまで考察するに、結局彼等三人に必要なのはやはりドコエモンではない。ゆっくりとした時間、ただそれのみである。誰しも生きている以上、大人になる。上手くはなくとも何とか世の中と折り合いをつける術を学んでいくのだ。それは勝手に解決するものであり、また小学生に求めるべきものでは当然ない。それこそ、ごくごくつまらないifであるが、ジェイアンが大人しい人間であったらノブタに対して確実に距離を置いただろう。ヒネオが素直な人間であったらジェイアン以外との友情がいくらでもあっただろう。ノブタがまともな人間であったらヒネオにハブられる目にも遭わないだろう。誰かが少しでも先に成長すると成立しなくなってしまう関係。上手く回ってしまうと上手く回らなくなってしまう矛盾。アンビバレンスというやつだ。あの三人は互いの欠点でもって起承転結を回しているのだ。ガラス細工の様な友情である。少しでも押せば砕けてしまいそう。なんて美しいのだろう。余人が踏み荒らして良い様なものではない。あの三人はアレで完パケ。誰が入る隙間もない。しつこいようだがヒネオがほんの少し口を閉じるだけで友達が出来ると知った時、彼等の人間関係はすっかり丸くなりぐるぐると回り始めてしまう。トゲが抜けていくのは良い事。良い事だが、ソレは他人によって齎されるものではない。回し車のネズミと同じ、人間の力でもって外からグルグル回されたらたまったもんではないだろう。誰しも自分のペースというものがある。ただ寝転んでいたいような時もある。
つまりドコエモンは、なる様になっていた場所に土足でドカドカ入り込んできただけ。ノブタの成長においては、寧ろ阻害的に振る舞う毒リンゴになってしまったと言わざるを得ない。ジェイアンは成長した。ヒネオは成長した。でもノブタはノブタのまま。ドコエモンが甘やかせなくなった代わりと、シズエが甘やかす始末である。一体何処が好転された未来であるのか。疑問というのはつまるところ、セカラシの謎ムーブに行き着くのだ。
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