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「そうか。大変だね」
「アンネは?」
「昼からのシフトにしてあるから、少しは寝られる」
「悪いわね。遅くまで付き合わせて」
「いいよ。リスクは高いけど、悪くないバイトだよ」
げぷ、と愛らしいゲップがきこえた。
「いい子だー、アレン」
アレンを抱くむき出しのアンネの腕は、切り傷でいっぱいだった。アンネの生い立ちも今の環境も詳しくは知らないが、間違いなく自分で切った後だろう。傷の大半は白くなっているから、最近はやっていないようだ。
いつも行くパン屋の投げやりな接客の店員。
ユニフォームのチェックのワンピースのスカート丈はやたら短くて、身長のさばを読むためかかかとの高いエナメルの靴をいつも履いている。その靴は傷だらけで、裕福なお嬢様の社会勉強のためのアルバイトではないことが伺えた。比較的、いつ行っても彼女は働いていて、基本的に笑顔はない。だが、初めてアレンを連れて来店したとき、パンを選んでいるエリザベスの目を盗んでアレンに手を振っているのに気がついた。エリザベスがアンネの方を向くと、ぷいと俯いて、トレーを拭く作業に戻っていた。
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