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墓場の土は、想定より固かった。用意してきたショベルが心もとなく感じる。何しろホームセンターで購入した、安物のショベルなのだ。
万全を期したかったのは山々だが、エリザベスの経済力では、今はこれが限界なのだ。
「めちゃくちゃ固いね。ショベル曲がっちまうんじゃないの」
アンネが足掛けにガリガリの脚を乗せてうんうんうなっている。刃先は十数センチしか土にめり込んでいないようだった。
「悪いけど、何とか頑張って。多分、あと二時間くらいはアレンも寝ててくれるから、その間に暴いて、埋め直すとこまでやるわよ」
「分かってるよ。給料分は働いてあげる」
アンネは華奢な腕を不器用に動かして、土をえぐる。
アンネに指図してばかりはいられない。
エリザベスも腰を入れてショベルを土に突き刺した。
胸に抱っこ紐で固定したアレンが、エリザベスの重心を崩す。だが動いたり起きたりする様子はない。
夜泣きはするが、眠りは深いたちのようで時々生きているのか心配になるくらい静かによく寝る子だ。
本当に、しっかり寝てくれる子で助かった。
十日前にも一度、別の墓を暴いた。
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