墓穴

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 それがエリザベスとアンネの初仕事だったわけだが、そのときもエリザベスはアレンを連れて臨んだ。    誰かに預けられればいいのだが、生憎そんな環境はエリザベスには整っていない。 「ふっ」とか「うんっ」とか、小さな声はあげながら、けれども会話なく二人は見知らぬ女の墓を掘り続けた。    ここは低所得者専用の墓場だ。火葬された骨が骨壷に収められ、それが直接土に埋まっている。墓石の下には同じく石でできた納骨室があるのが一般的なのだが、とにかく予算を抑えて作ってあるらしく、ここにはそんなものはない。墓石にも凝った装飾はなく、故人の名前と没年月日とお粗末な祈りの言葉が彫られているだけだ。骨壺までの深さは一メートルもないであろう。    この国、シェリラリア共和国でも数十年前までは土葬が主であったが、費用が嵩むことと衛生的理由、それから墓地の敷地問題で現在では火葬が主流となった。    エリザベスたちにとっては、好都合である。土葬の場合は、墓荒らしはもっと難易度が上がろう。
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