悪夢

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悪夢

 ……  ……  何処からか声がする。 『統也ぁ、統也ぁ……』 『!』  パッと目を開ければ、そこは自宅のリビングだ。 『母サン……?』 『統也、ゴハンが出来ましたよ』 『……何で、いるの?』 『えぇ? 何よ? 寝ボケてるの? 腹減ったぁって急かすから、急いで作ったのに』 『え? ……ぁ、あぁ、そっかそっか……そう、だったね、ハハハ。 ぁ、ありがと、』 『あらヤダ。ねぇ聞いた? お父サン、統也が珍しく、ありがとうですって!』 『また小遣いでも欲しいんじゃないのか?』 『きっとそうね』 『いや、違うよっ、本当に、純粋に、有り難いなって……それだけだってっ、』 『はいはい。分かったから食べちゃいなさい』 『ぅ、うん』 (ああ、何だ。やっぱり夢だったんだ。そうだよな、 死んだ人間が生き返ったり、そんなおかしな事が起こるわけ無かったんだ) 『そう言えば、昨日はあれからどうしたの?』 『昨日って?』 (母サンが死んだり、俺が殺したり、) 『ホラ、言っていたじゃないの。お友達が沢山死んだって。 田島君はもう2度と目覚めないんでしょう? 可哀想に、ご両親も大変よねぇ』 『……』 『でも、車の事故は驚いたわ。 統也ったら膝すりむいて帰って来て、お母サン、本当にビックリしたんだから』 『……母サン?』 (あれは全部夢で、俺はこうして現実に戻って来たんだよな……?) 『あ。そうそう。お味噌汁の具、少し変わった物にしてみたの。 どう? 美味しいでしょ? ホラ。良く見て御覧なさいな』  統也は黒目だけを下に、手に持った味噌汁の椀の中身を見る。 『ぅ、』  眼球が1つ、浮いている。 『それね、お母サンの目なのよ?』 *
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