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「ぃ、岩屋サン、待って! 待ってください!」
突然、統也が声を張り上げるものだから、岩屋は慌ててブレーキ。
車体が大きく前後に揺れる。
「何!? 何だ!? ゾンビか!?」
「違います! レスです、レスが来たんです!」
「レ、レス!? ゾンビか!? 新種のゾンビか!?」
「違いますよっ、返信です!
俺が書き込んだメッセージに返信が来たんです!」
「は、はぁ!?」
大袈裟に騒ぐ統也に、岩屋は目鯨を立てる。
「それがどうしたよ!? いちいちビビらせるんじゃねぇよ!
メールなら黙ってやれッ、このクソガキが!」
「だって、レスが……」
「だから知らねぇよ! 次 騒いだらブッ飛ばすかんなッ、クソガキ!」
「は、はい、すみません……でも、あの、」
「何だよ!」
「これ、見てくださいっ、」
岩屋はヒステリックに眉を吊り上げるも、差し出されたスマホを受け取る。
画面に目を落とせば、統也が書き込んだメッセージにコメントが寄せられている事が分かるだろう。
「何だよ、これ……?」
「俺のメッセージを見て、ここに来た人がいるのかも知れません!」
「はぁ!? いつの間に そんな勝手な事しやがった!?」
「だ、だって、生存者がいるなら合流できた方がいいと思って……」
「……あぁ、まぁ。うーん、」
『俺に断りもなく』と言いたい所だが、生存者は多ければ多い程良い。
単純に心強い。岩屋は統也にスマホを突き返す。
「レスしてみますから、このまま待っててください!」
《生存者ですか? 今、何処にいますか?》
《生存者です。F地区自衛隊の隊舎の中にいます》
「やっぱり! 岩屋サン、この人 中にいるそうです! 避難させて貰えるかも!」
「ホ、ホントか!? ゾンビじゃねぇだろうな!?」
「ヤツらはネット何かやらないですよ!」
《今、門の前にいます。中は安全ですか? 避難させて貰えますか?》
《いいえ。どうか助けてください》
「え? 助けてって……」
《化け物がいて外に出られません。たくさんいる。見つかったら殺される!》
「「!!」」
この返信に、2人の肩は大きく震える。
外観からは気づけなかったが、避難どころか内部は死者に占領されていると言う。
迂闊に近づいていれば、死者達を呼び寄せていた所だ。
(中に、アイツらがいる……)
統也は窓から見える隊舎をジッと見つめ、喉を鳴らす。
その横顔をフロントミラー越しに、岩屋は頭を振るのだ。
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