2日目。

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 脱兎の如く走る足音と、1度は切れたが再び鳴るスマホの着信音に、内部の死者達がゾロゾロと姿を現す。 相手が如何に隆々な肉体をもっていようと怯んではならない。 行く手を死者達が遮れば、統也は両手に銃を握って竹刀の様に振り下ろす。 (頭、頭だ! そこを狙えばコイツらは動けなくなる! もう1度、) 「死んでくれ!!」  銃床で死者の頭を殴りつければ巨体はグラリ……と傾き、地を揺るがす様な音を立てて倒れる。 雖も、死者は1体では無い。続々と現れ、2人に襲いかかる。 「うわぁあぁ!!」  日夏は鼻の頭を赤くしてベソをかき、恐怖の余りに走る事を忘れて蹲る。 これでは『喰ってください』と言っている様なもの。 統也は日夏の腕を執拗に引っ張る。 「何やってるんだよ、お前も応戦しろ! 頭を狙えばどうにかなる!」 「イヤだ!! 怖い!! 怖いよぉぉぉぉ!!」 「ふざけんな! 男だろ! 死にたくなかったら――」  統也の頭に、あの言葉が思い出される。 「生き抜きたければ頭を使え!!」 「!」  この言葉に、日夏の目は大きく見開かれる。 そして、これに応える様に立ち上がり、肩に下げていたアサルトライフルを構える。 「うぅ、ぅ、うぅぅ、……うわぁあああああ!!」 ズダダダダダダダダダダダダ!! ズダダダダダダダダダダダダ!!  いつの間にセーフティーを解除したのか、日夏が銃のトリガーを引けば銃口から一気に弾が発射される。 「うわぁ!! 危ない、やめろ! こっち向けるな!」 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! うあぁあぁあぁあぁん、あぁあぁあぁ!!」  泣き叫びながらの乱射。薬莢があちらこちらに飛び散る。 到る所を銃撃し、流れ弾が辛うじて死者に命中するも頭に当てない事には意味が無い。それでも死者の前進を封じる手としては有効か、着弾の衝撃に大きく体を仰け反らせて倒れる。 「も、もう良い、もう良いから!! 充分 足止めになってるから、ここを早く出よう!!」 「うわぁん!! うわぁあぁん、あぁあぁ!!」 「駄目だこりゃ、」  力いっぱいトリガーを引いたから、指が硬直して外れなくなってしまった様だ。 体中に巻きつけたベルトリンクの弾が無くなるまで収まりそうにない。 こうなったら日夏そのものを武器として振り回すとしよう。 統也は死者の方向に日夏を向け、発砲させまくる。中々の連係プレー。 ズダダダダダダダダダダダダ!! ズダダダダダダダダダダダ…… ――カチッ、カチ、カチンカチンカチン!  弾を使い切れば、スライドがリコイルするばかりの虚しい音が繰り返される。
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