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「た、た、弾がぁ!!」
「もうすぐ出口だ! 兎に角 走ってくれ!」
応戦は逃亡のついでとは言え、体中を蜂の巣にされた死者達の肉体的損傷は大きい。死者達が腹這いになっている間に隊舎の外に飛び出す。
照りつける日差しの明るさに、日夏は忽ち脚力を失って膝を突く。
「日夏、止まっちゃ駄目だ! ヤツらを巻くまで走るんだ!」
「ハァハァハァ、、は、はぃ……、」
外へ出た所で逃げ切れた訳では無い。
警戒を緩めない統也は周囲を見回す。岩屋の車は見当たらない。
(やっぱり行っちゃったか……)
『俺達は今ある自分の命を守るべきなんだ!』
(そうだよな、何度も助けて貰おう何て虫がいいにも程があるって……)
「日夏、何処か隠れられそうな場所は!?」
「えっと、えっと……」
「家は!?」
「電車に乗らないと……」
「クソっ、」
この界隈に明るくない2人の足は行き先に迷う。
(どうする? 何処へ逃げる?
表に出てないだけで死者達は至る所に潜んでいる、
いつか追い着かれる、いつか回り込まれる……
このままじゃ、いつか喰い殺される!!)
こうなったら走り続けるしかない。
向かう場所も無いまま門外を目指し、ゴールラインを切る様に駆け抜けると同時、シルバーのワンボックスカーが滑り込む。
キキキキィィィィ……ッ、
「水原君!!」
「ぃ、岩屋サン!?」
疾うに去ったと思いきや、又も岩屋が救世主。
2人の体スレスレにドリフトを決めて車を停めると、乗車を急かす。
「早く! 早くしろ!!」
「はい!!」
統也は後部座席のドアを開け、日夏を押し込むと、自分も続いて飛び乗る。
岩屋はドアが閉まる間も惜しみ、アクセル全開で車を急発進。
統也の背に伸びた死者の手を寸での所でかわし、一難を逃れる。
心臓は今に止まってしまいそうな程の間一髪。
ハンドルを握る岩屋の手はブルブルと震える。
「岩屋サン、戻って来てくれたんですねっ?」
「戻ってねぇよ! ずっとあそこにいたんだよ!
門の前じゃ目立つし、車引っくり返されたら堪んねぇから壁際に着けといたんだよ!」
「俺、岩屋サンを誤解してました!」
「何が誤解だ、バカヤロ! マジでふざけんな! ホントふざけんな!!
後ろの荷物頼まれたって困るんだよ! 人の迷惑考えろ!
マジでテメぇ、後でブッ飛ばすからな!! これだからガキは嫌いなんだよ!!」
後ろの荷物とは、未だ目覚めない田島の事だ。
確かに、放って置けば死ぬだろう人間を押し付けられても困る。
諦めたくないなら最後まで責任を持って欲しい。
そこを突かれては言い返す言葉も見つからない統也は頭を下げ倒す。
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