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「す、すみません、ご迷惑を……」
「もういいよ! それより……そいつか? 中に隠れてたヤツは?」
「はい!」
「またクソガキか……」
身なりを見れば高校生だと一目瞭然。
岩屋にとっては荷物が増えた様なものだ。
岩屋の苛立たしげな口調に、日夏は小さく背を丸める。
折角 一難を乗り越えた車中の空気を悪くしたくない統也は日夏の肩に手を置き、岩屋の顔色を窺う。
「彼は靖田日夏君。この人は岩屋サン。車も岩屋サンの物だ。
それから、コイツが田島。俺の友達」
「こ、この人、眠ってるんですか……?」
「ああ。でも大丈夫だよ、まだ。うん。大丈夫だ……、」
ただ静かに寝息を立てているだけの田島を安全と断言する事は出来ないが、統也は自分自身にも言い聞かせる様に頷く。
日夏は田島から少し距離を置いて統也を見やる。
「アナタが、水原統也サン……?」
「うん」
「はぁ、良かった……僕、掲示板を見て、」
「やっぱり!」
「本当に会えるとは思わなかったです、本当にっ、いい人で良かった!」
「俺もだよ。気づいてくれて嬉しかった。ありがとう、日夏」
2人が固い握手をかわすも、岩屋は乾いた溜息を零して横槍。
「でぇ。揃々 次の事を考えてくれねぇかな?」
「そ、そっか、」
「一先ず給油。水原君、やれるよな?」
「へ?」
「給油だよッ、あんな危険なトコで待っててやったんだから、それくらいするのが道理ってもんだろ!」
「は、はぃ、」
「それから、何だっけ? お前」
「ゃ、靖田です……」
「靖田君か。
ガソリンスタンドの中に赤い携帯缶があると思うから、それ、幾つか探して持って来て。そん中にも念の為、ガソリン詰めるから」
「ぼ、僕、ですかっ? スタンドの中って、1人で、ですか……?」
「オイオイオイオイ! 助けて貰っておいて仕事しない気か!?
手が足りねぇんだから協力しろよ! だからガキは嫌なんだって!」
「す、すいません……、」
初対面の大人に頭ごなしに怒られて反論する度胸は無い。
日夏は自信も無いのに頷く。
セルフのガソリンスタンドに停車すると、統也は周囲を警戒しつつ車を降り、日夏を手招く。死者に嗅ぎつけられる前に素早く用を済ませてしまおう。
「日夏、その物騒なのは ここに置いといた方が良いかな」
「え!?」
「ここ、火気厳禁だから、誤って発砲したら大変な事になる」
「はぃ、」
ガソリンは気化しやすい。静電気1つで爆発する事もある。
それで無くても先程の日夏の思い切りの良さには命を脅かされているから、万一を考えて武装は解除させておきたい。
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