3日目。

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 ――昨晩。 『ゾンビにイレギュラーがある、だって?』  日夏の部屋での作戦会議中、岩屋が声を裏返せば2人は目を合わせ、共感する。 『はい。きっと、多くは力もそれ程強くは無いし、感覚も動作も鈍い。 でも俺が見たのは、普通のよりも少し感覚が優れてました。 静かに隠れていれば やり過ごせると思ったのに、そいつは気づいて…… それに力も強かった。ドアを破るんじゃないかってくらいに』 『な、何だって!?』 『僕が見たのも、それに近かったと思います。 動き自体は鈍いけど、ガラス窓を素手で割ったり、』 『ま、参ったな、そんなのに出くわしたら……足が速かったりは無いよな? 道は障害物だらけだ。あんまりスピード出して事故率 高めたくねぇぞ、』 『自衛隊の駐屯地でも感じたけど、肉体その物は俺達と比べて だいぶ脆い』 『そうですね。やっぱり、死んでるから……でしょうか?』 『そうかも知れない。 再生力ってのが無さそうだから、頭を一撃で狙えなくても手足に攻撃できれば動きを止める事が出来る』 『その辺はさ、若者に任せるわ。俺、27のオジサンだから』  岩屋の場合、端から戦う気が無い。 その辺を突いては身も蓋も無くなるだろうから、心に秘めておく事にしよう。 日夏は体を小さく丸め、表情を憔悴させる。 『でも、僕が1番怖いのは……』 『ゾンビより怖いモンがあるのかよ、靖田君は』 『……、』 『日夏、他に知ってる事があるなら教えてくれないか?』  統也に問われ、日夏は頷く。 『生存者の中にも、化け物みたいなのがいる……』  この言葉に、2人はカクリと首を傾げる。 日夏が何を言いたいのか分からない。 『ま、まだ見てないんですかっ、アレを……』 『アレって?』  日夏は統也に掴みかかる。 『凶暴な人間ですっ、すごく凶暴な……怪物です!』 『に、日夏?』 『ニュースでも言ってたでしょっ? 暑さを理由に暴れて人を殺した人がいるってっ、生きてるのに すごく凶暴になって、暴力的になって、化け物だけじゃない、普通の生存者も襲うんです! 壊したり、殺したり、そうゆうのをすごく楽しんでいるんです!』 『ヤンキーか何かの慣れ果てか?』 『違いますよ、岩屋サン! そんなんじゃない! 狂った殺人鬼です! 怪物です! 無抵抗な人を殺してるのを僕は見たんです! 僕も殺される所だった! 生存者なのに……同じ生存者なのに!!』  日夏は感情を露わに、統也に縋りついて泣くじゃくる。 精神は酷く混乱している様だ。
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