3日目。

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(断られた?)  呆ける統也だが、物は考えようだ。 電話先の女は遠慮しているのかも知れない。 もっと前向きな思考で言えば、会社は避難場として確立され、多くの生存者が集っているのかも知れない。 「あの……えっと、そちらは安全なんですか?」 「安全? ハァ……言ってる意味が分からないんで、電話切ってもイイですか? 充電、勿体ないんで」 「ま、待って! 待ってください! それは父の持ち物です! 父が何処にいるのかくらい教えてください!」 「ハァ……分かるわけないじゃん。嫌んなるなぁ、もぉ…… 会社はメチャクチャで、同僚は窓から飛び降りたり、首吊って死んだり、寝たっきり起きない人もいる。必死になって最上階の社長室まで逃げて来て、それっきり私は1人。他の人の事なんか知らない」 「でも、父は!?」 「知らないって言ってるでしょぉ? あぁ、ホント嫌んなる…… 家族とか友達に一通り電話して連絡つかなかったら、私も死のうと思ってるんで、もう切りたいんですけど?」 「何でそうなるんですか!?」  まさかの自殺宣言。 統也が狼狽えれば、女は再三と溜息を聞かせる。 「ハァ……言って解かると思えないんですけど?」 「解かる解からないの問題じゃないですよ! そんな事言われたら、普通 聞き返しますよ! 普通そうでしょ!?」 「あぁ、面倒クサ…… 逆にぃ、こんなんなった世の中でどうやって生きて行けって? 毎日ビクビクする何て嫌すぎるんですけど? だったら死んだ方がマシでしょ? 飛び降りて死んじゃえば それで終わりで、その後ゾンビになろうが知ったこっちゃ無い」  これはこれで一理ありそうだが、それを容認できる程 統也は大人では無い。 (最近の大人って…… 岩屋サンは安全第一すぎるし、この人は逆に無関心すぎるし……)  統也は声を怒らせる。 「知ったこっちゃ無いって……無責任な事言わないでくださいよ! こっちは生きる気でいるんです! ヤツらの1体だって増えて貰っちゃ困るんです!」 「うっさいなぁ、生きるヤツは生きるヤツで勝手に頑張ればイイっつの。 バカじゃないの? だから言ったんだけど。言っても解かんないって」 「解かりましたっ、解かりましたよ! それじゃぁどうぞ、好きにしてください! アナタが襲って来たら、俺は躊躇わず頭カチ割りますから! でもね、父のスマホだけは返してください! ちゃんと! 無事に! これから会社に取りに行きますんで!」 「勝手にすれば? どうせ無理でしょ。 15階の社長室までゾンビだらけで、出られもしないんだから」 「そうですか! でも心配無用です! って、平凡な高校生ナメんなよ! 精々高みの見物してれば良い!」  統也は自ら通話を切ると岩屋を見やる。 「岩屋サン、お願いします!」 「水島工業だろ? もう向かってるよ」 「岩屋サン、やっぱり見直しました! ありがとうございます!!」 「でも、水島工場だったら30分だ。30分待って出て来なかったら先に行くからな」 「……」  岩屋は何があっても待機組の姿勢を変える気は無い。 *
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