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「コ、コレとコレは使ってませんけど……」
「弾は入ってるよな?」
「一応は……」
「使い方、分かるか?」
「え!?」
「だって昨日、撃ってたじゃないか」
「ぁ、えぇ……」
日夏は戸惑いながらも、指を指す。
「コ、ココとココ……安全装置って言うらしくて……」
「詳しく無いのか?」
「ご、ごめんなさい……
あそこで1人で閉じ篭ってて、何も持ってないのは怖かったから、ネットで調べながら弾を詰めただけで……だから、詳しい事は分からなくて……」
「そうか」
ガンマニアでは無かった様だ。
ネットの情報に頼りきりな日夏の経験値が低いのは否めないが、今は受け売りの知識でも有り難い。統也は頷く。
「コレを外すと弾が出る?」
「そうでした。僕が使った時は」
「それで、ココが引き金ってヤツだよな?」
「は、はい。……あの、統也サン、まさか行くつもり、ですか……?」
これは岩屋も聞きたかった事だ。日夏と共に統也の反応を窺う。
「岩屋サンの言いたい事は分かりますよ? でも、少し見ておきたいんです」
「ダメだダメ!!
何が出るか分かんねぇのに、こんなトコ、1秒だっていたくねぇ!!」
「でも、バリケードがどう壊されたのか、見ておいた方がいいと思いませんか?
日夏の言う人間の化け物が本当にいるのか、これからそうゆうのと出くわすかも知れない。だから、少しでも知っておきたいんです」
今後の生存戦略を考えれば、敵に成り得る相手の情報を見落とすべきでは無い。
統也の最もな言い分に、岩屋は折れる。
「うぅ、まぁ確かに……確かにな。
うん、分かった。確認な、それだけだ。早くしろな!」
「はい」
ハンドガンは背中の腰ベルトに差し、統也は単身、車を降りる。
抱え持ったアサルトライフルのセーフティーを解除。
発砲できる準備を整えてしまえば、緊張感は一気に増す。
周囲を見やって足を運ばせるが、この界隈に人影は確認できない。
死者は建物の中に潜んでいるのだろうか、置き去りにされたバリケード群は同じ方向に向かって倒れている様子から、人の勢いに追いやられたものだと感じる。
「グリーンネット……」
日夏が疑いを持っていた物だ。
拾い上げてみれば、切れ味の良いナイフで切り刻まれた形跡がある。
(ヤツらに道具を使う知識があるとは思えない。
そうなると、誰かがわざと……?)
『狂った殺人鬼です! 怪物です!
無抵抗な人を殺してるのを僕は見たんです!
僕も殺される所だった! 生存者なのに……同じ生存者なのに!!』
日夏の言葉を思い出せば、背筋が凍る。
ならば、敵は死者だけでは無い。唯一の同胞すらが危険分子。
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