3日目。

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(信じられない……死人が蘇えって人を襲う中、全く別の意識を持って今の環境に適応してる人がいる? そんなヤツ、一体どうやって区別をつければ良いんだ!? アイツらは明らかに死者である事が分かる! でも、人間の化け物なら見た目は俺達と変わらないんじゃないのか!? 生存者だと思って簡単に信じたら寝首をかかれる!!)  新たな事実が分かった以上、死者と対峙する気構えだけでは足りない。 心身ともに健康、知能をも持つ怪物にも警戒しなくてはならない。 死者から回避できた事、正常な仲間達に出会えた事、今こうして生きていられる事、これら全てが奇跡の連続だったのだ。  統也は目を閉じて呼吸を整えると、スマホを取り出し、日夏をコール。 「は、はいっ、統也サン? どうしたんですか?」  日夏はフロントガラス越しに統也を窺いながら問う。 統也も視界に車中の2人を捉えて続ける。 「日夏の言う通りかも知れない。生存者がここに来て破壊行為を行ったみたいだ」 「やっぱり!」 「そいつが今も ここに留まっているかは分からないけど…… 俺はこのまま父サンの会社まで行ってみようと思う」 「ぇ、え!? 駄目ですよ、統也サン! なに言ってるんですかっ、車に戻ってください!」  日夏が取り乱せば、岩屋はスマホを取り上げ、代わって説得に入る。 「お前、水原工業に乗り込む気なのか!? 親父サンがいるかも知れないからって、今回ばっかりは流石に無理だぞ!! そんな無茶な事、親父サンだって喜ばねぇぞ!!」  耳元でギャァギャァと喚かれ、統也は苦笑する。 (岩屋サンらしいなぁ、) 「その通りだと思いますけど。 何か……色々やっておかないと、俺、後悔しそうな気がするんですよ」  統也の言葉に、岩屋は耳を疑う。 「み、水原君、キミ……」 「ああ、誤解しないでくださいよ、岩屋サン。俺だって死にたくありません。 死ぬ気もありません。でも……」  統也の目は、真っ直ぐに伸びた先の見えない道の消失点に向けられる。 (我ながら馬鹿な事を言ってると自覚している。 父サンに会いたいって感情が1番にあるのは事実だけど、 もっと根本的な部分で、自分が真っ先に動かなきゃいけないような気がしてる)  長息を吐き、気を引き締める。
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