3日目。

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「ま、待ってください! 岩屋サン、統也サンを置いて行くんですか!?」  日夏が運転席に身を乗り出せば、岩屋は煩わしそうに突き飛ばす。 「邪魔だ! 後ろが見えねぇだろ!」 「いッ、うぅぅ……、」  日夏は後部座席の下にしゃがみ込み、岩屋の剣幕に怯える。 「アイツが先に行けって言ったんだ! それが1番いいから そう言ったんだろ!」 「そ、そ、そんな……統也サンは僕達の事を心配して……」 「だからどうした! それが何だって!? 何にしろ、それがアイツの判断だろうが! 考えがあっても無くても、言った責任ってのがあんだよ!」 「で、でもっ」 「嫌ならお前もここで降りろよ! アイツが心配だってなら手伝ってやりゃ良いじゃねぇか! ついでに、そのゾンビ予備軍も面倒クセぇから連れて行け!」 「!!」  岩屋の指摘に日夏は押し黙る。 統也を待つ事は出来ても、田島を連れて車を降りる度胸は無い。 そんな自身の情けなさに、日夏は膝を抱えて泣き出す。 岩屋はそれすらも疎ましげに舌打ちする。 「ホラみろ、お前だって結局は自分の事が1番大事なんだろうが! それでいいんだよ、それで! これまでだろうが、これからだろうが、世の中ってのは奇麗事だけじゃ生きていけねんだ!」 「うぅぅ……っっ、」 「さぁ、どうすんだ! 選べよ! ここで降りるのか、このまま残るのか!」  岩屋は容赦ない。泣いて誤魔化せる相手でも無い。 「ぇ、選べません……僕には選べません……うぅぅ、っっ、」 「そうかよ! じゃぁ黙ってろ!」  留まり続ける事は出来ない。 岩屋の車は次の目的地となるY市へ向けられる。 *
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