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幸い、彷徨うばかりの死者達に生存者を見つける注意力も無ければ、示し合わせて集団行動する様子も見られない。
タイミングを見計らいさえすれば、隙を突く事は可能だろう。
ここは焦らず、じっくりと、小動物の様に身を潜ませる。
(窮屈だな……でも、これだけ狭けりゃ、アイツらだって簡単に入っては……)
ズズズズ……
ズズズズ……
(何の音だ?)
奥は行き止まり。足元にはゴミが転がっている。
ズズズズ……
何と無しに上を見る。
「!?」
統也は目を見開き、今に口から飛び出しそうな叫びを飲み込む。
(何でそんなトコに挟まってるんだよぉ!?)
放漫な肉体がビルとビルの間に挟まって、頭を下に宙ぶらりんのゾンビ。
どんな脈絡があって猫の額ほどの隙間に挟まって身動きが取れなくなるのか知れないが、既に腐乱は始まり、性別の区別も付かない程に変色している。
漸く眼下に現れた生きた肉に手を伸ばし、統也の頭上でジタバタと暴れている。
ズズズズ……
(うううッ、待てッ、待てッ、待てッ、ゆっくり落ちて来るな!)
頭上への警戒が希薄だった事を猛省。
応戦しようにも、狭すぎてライフルを振り上げる事も出来ない。
死者が落ちて来る前に ここを出たいが、無暗に飛び出しては他の死者に気づかれてしまう。
統也は膝を竦め、死者との距離を僅かにも稼ぐ。だが、それも無意味。
圧迫に耐え切れず押し出された目玉が2つ、ドロリ……と落ちて来る。
「ぅ、、わぁ!!」
堪えられないグロテスグ。
統也は遂に声を上げ、反射的に通りへ転がり出てしまう。
「ぁ、……しまっ、」
「グググ、……ガァアァアァアァアァ!!」
「アァアァアァアァ!!」
「バカか俺っ、ここまで来て何やってんだよっ、」
後もう一息と言う所で、通りを徘徊する死者達の目に晒される。
こうなったら、父親の会社までを一気に駆け抜けるしかない。
行く手を阻み、襲い来る死者達をライフルを振り回して殴りつける。
(頭! 頭だ!!)
「ウガアァアァアァ……!!」
「クソっ、キリが無い!」
前後左右、統也を引き留めるべく干からびかけた何十本もの手が伸ばされる。
それは次第に服を掴み、手足を掴みと、統也の動きを奪ってゆく。
(まずい、振り払えな――)
雁字搦めにされると そのまま引き摺り倒され、地面に横転。
態勢を整えようと体を捻るも遅い。死者達は統也の目眦の距離に迫り、大きな口を開ける。
そして、ガブリ!! と左脹脛に走る激痛。
「いッ、あッ、ぅ、あぁあぁあぁ!!」
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