3日目。

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「ここに来る途中に自衛隊の駐屯地に寄ったんだ。それで……」 「盗んで来たのか?」 「ち、違うよっ、友達が持って来たんだ! それを護身用に借りただけでっ、」 「ハァ……分かった分かった。でも、危ないから父サンに渡しなさい。 これと取り換えよう。杖の替わりになるだろうから」  ライフルは怪我をした統也が持つよりも、父親に任せた方が良さそうだ。 代りに鉄パイプを受け取る。 「父サン、安全装置は外してあるよ。引き金を引いたら弾が出るから気を付けて」 「こうゆう会話、したくなかったなぁ、父サンは」 「ぉ、俺だって、」  統也の小さな頃に思いを馳せれば、ラジコンカーで良く遊んだものだ。 それが今や銃の扱いについて話す事になろうとは、父親としては現実を呪ってならない。  統也は階段を上がりながら 前を進む父親の背を見つめ、小さな笑いを零す。 「ハハハ。やっぱり父サンはすごいや」  父親は訝しみ、統也を振り返る。 「父サンに会えて、俺、すごくホッとしてる。父サンといれば安心だって」 「……、」 「分かってるよ。 気を緩めちゃいけないって事くらい。でも、父サンに会えて良かった」 「父サンもだよ」 「あの女の人を助けて、ここを無事に出られたら…… 俺、父サンに話したい事があるんだ」 「話?」 「……うん、」  伝えるべきはただ1つ。 (父サンは母サンの死を嘆くだろう。そうして、俺を憎むだろうか…… 怖いけど、でも、父サンにだけは言わなきゃならない。 俺が、どんな重い罪を犯して今を生きているのか……)  統也が何を言いたいでいるのか父親には見当もつかないが、物思いに耽った様子から、大事な話だとは想像できる。 「分かったよ」 *
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