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あたしが住んでる国と、ユズキが住んでる隣の国の間で、戦争が勃発したのは、卒業してすぐのことだった。
理由は単純。
国のトップがお互いに、領土を広げたい、って開戦を決めたから。
国民全員、戦争に協力するように、って命令されて、平穏な日常は一変。
あたしの勤務先は武器工場になり、武器工場の地下にあるシェルターがあたしの家になった。
空襲を知らせるサイレンが、頻繁に鳴り響くたび、シェルターに逃げこむ毎日。
爆弾が近くに落ちるたび、ベッドの下にもぐりこんで、凄まじい揺れと恐怖をやり過ごす。
領土を広げてくれなんて、国民は望んでない。
戦争なんてやめて欲しい。
そう訴えた人たちもいたけれど、全員逮捕されてしまった。
だからあたしは耐えることにした。
武器工場とシェルターを往復するだけの毎日に。
言いたいことひとつも言えない毎日に。
空に浮かぶ月さえも、見えない毎日に。
生きて生きて生き抜いて、そうすれば、いつかまた、ユズキに会える日が来ると信じて。
地下シェルターの天井を見上げて、あたしは願う。
ユズキにも、生きていて欲しい。
生きてまた、会いたいよ。
いつか、平和な世の中が戻ってきたら、また、一緒に月に行きたいよ。
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