恋の大輪、夜空に咲く花

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「ひとくち」 不意にせがまれ、景織子は目を丸くする。 「これ……?」 「他に何がある」 「だって甘い物嫌いじゃない」 「このくそ暑い状況から一瞬でも逃れられるなら、話は別だ」 言い返す間もなく龍貴が近付き、景織子は慌てて氷を掬う。 程なく苺味の甘い氷は、恋人の口の中に収まった。 固唾を呑んで見守っていれば、やがて龍貴の眉が顰められる。 「余計喉乾いてきた」 彼が食べる前から、この展開は十分予想出来ていた。 忌々し気に言い捨てる龍貴に、景織子はがっくり肩を落とす。 「だーかーらー!苦手な物なんでわざわざ食べたのよ」 「景織子があんまり美味そうに食ってたから、ついつられた」 困ったように口角を上げる龍貴に、景織子は頬を赤らめる。 「どーせ、どんな猛暑でも極寒でも食欲だけは落ちない女ですよ」 スプーンを噛み締めた景織子に、龍貴は吹き出す。 「褒め言葉だ」 宥めるように頭を撫でてくる龍貴の手を受け、景織子は拗ねながらも無言でかき氷を口にする。
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