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「寝た子を起こすような事言うな。もう2時間近く禁煙してるの思い出しちゃっただろ」
この世の終わりとばかりに天を仰ぐ恋人に、景織子は呆れる。
「たかだか2時間ごときで禁煙とか、片腹痛くてしょうがないけど」
「ヤバい。吸いたくて仕方なくなってきた」
パンツのポケットを探り、何やら周囲を窺い始めた龍貴を、景織子は慌てて制する。
「やめてよ。子供達だって大勢いるんだからね」
「ここでは吸わねーよ。どこか人気のない──」
「そんなとこ皆無だし。芝生が燃えでもしたらどうすんのよ。火事になっちゃうじゃない」
我慢を継続していろときつく言い渡し、景織子は溶けかけのかき氷を食べ終える。
脳内は嗜好品の事で一杯だろう恋人を尻目に、景織子はわざと大きく宣言した。
「お腹空いてきちゃった。焼きそば食べよーっと」
フードパックの山からお目当てを探し当て、両手を合わせる。
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