LA1 三人で幸せになるための恋人ルール

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 ルール1。家事は分担制。  放っておくと、スイは全ての家事を一身に背負ってしまう。“やりたくてやっているんだから”と。だから、食事の用意以外の家事は当番制にしている。本当は料理も当番制にすると主張したが、それだけはどうしても自分がやりたいと、スイが言い張った。 「よし。できたよ」  カウンターテーブルに皿を出しながら、スイが言った。食事は大抵、カウンターで取る。手の込んだディナーにする時は折りたたみの食卓を出すか、ソファで食べるのだが、普段はカウンターで三人並んで食事をすることが多かった。 「テレビ消して」  ルール2。食事の時はテレビを消す。  これは、スイの提案だ。食事の時は会話を楽しみたいということらしい。二人だけの時は大抵つけっぱなしで、下手をするとお互いの顔を一度も見ない時があった。 「ところで、こないだのあれ。なんだっけ、木下グループのあれ。どうなった?」  ユキがきいてくる。  スイが食事に加わってから、ユキは仕事の話を良くするようになった。以前は、事前情報や後処理についてあまり興味を示さなかったのだが、最近はきちんと理解するようになったと思う。 「ん。あれはやっぱりやめることにした。どうも、菱川がかんでるのは間違いないしな」  だから、アキも自分の意見をしっかりユキに説明するようになった。 「T病院経由でね。資金の流れは、かなり巧妙に隠してるけど。改竄の跡が見つかった」  だから、スイもどうしてそうなったかをしっかり説明するようになった。 「菱川。なんだか、きな臭い感じなんだよな」  何とはなしにそう言ってふと、スイを見ると、スイも何かを考えているのか、手が止まっている。  その口の端にソースがついている。 「スイさん。ついてる」  そういって、まるで口づけるように唇の端をなめとると、スイの顔がぼっ。と赤くなった。 「わ。言ってくれれば自分でとれるって!」  ユキが微妙な顔で見ている。  ルール3。早い者勝ち。  スイの隙を見つけたら、それは早い者勝ち。後で気付いても邪魔しないこと。もちろん、早い者勝ちといっても、スイが許す場合のみである。  また、体力?的にスイに負担のかかる場合は、事前に本人の了承を得ること。拒否された場合には強要しないこと。これは、まあ、そういうことである。  このルールは圧倒的にアキが不利だった。基本的には仕事でも一人で行動することが多いアキはスイと一緒にいられる時間がユキより短い。だか、いやだからこそ、アキはかなり積極的にこのルールを活用している。目ざとさでいったら、弟は兄に到底及ばないからだ。 「……アキ君てさ。いかにも、女の子にモテそうだよな」  アキに舐められたあたりに細い指で触れて、まだ頬を赤くしたまま、スイが言う。少し拗ねたような表情だ。 「うん。まあ、モテるよな」  先を越された仕返しか、ユキも言う。
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