同棲開始、一日目

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 一回目は絨毯の上、そこにソファから引っぺがした敷物がぐちゃぐちゃに広がった、その上だった。そこで二人の人間が絡み合っている。床に寝転がった、低い視点から私はその姿を見ている。脱ぎ散らかされた服はまるで昆虫の脱皮のようだ。  人間は生き物であって、生き物が生の本然を全うするには、これが正しい姿なのだろう。  私の一方はそんな風に、まとまらない思考を掻き集めて、人間の思考のリズムをぼんやりと辿っている。もう一方は理性が理解できない、今しがた与えられた歓びを辿り、その波に永遠に揺蕩っていたいと、そう思っているようだった。 「もう、めちゃくちゃだよ……」  そう言う私の声は、予想外に甘ったるい響きを帯びている。私の目には、彼の背中の輪郭が、ブラインドで遮られながらも入ってくる外の光に縁取られて見えている。それが美しい、と私は思う。 「……ごめん」  吐息混じりにそう言うエックハルトの声は、子供の謝罪のような、そんな響きを帯びている。でも裏腹に彼の手はもう一度、私の弱いところを責めてくる。それに抵抗するどころか、ひっくり返された私の体は、勝手に腰を上げて反り返る。きっとどう見ても誘っているポーズで、多分、私は彼を誘ってる。もう一度、と。 「……ねえ、せめて」 「せめて?」 「ベッド、行こ」  それから、シーツの上の出来事だ。  私はまだ、彼の本気の攻めを知らなかった、それを思い知ることになった。  何度も何度も執拗に、彼は私の内側を突き、さらに奥に侵入しようとしてくる。 (前は、こうじゃなかった)  私はそう思う。あの初夜も、それから何度か抱かれた(もう、この話をするにはこういう表現を使うしかないのだ)時も、彼は慎重だった、というか故意にゆっくりとしていたと思う。  その激しさに、それでも私の身体がついていってしまう。それが引き抜かれそうになると、それを惜しむかのようにそれに纏わりつく。会えなかった数ヶ月の間に、彼を丸ごと、一番奥まで受け入れられるように、私の身体は準備ができてしまったようだった。 「——ああ、ああ、んッ」  こんな声を、よりによってこの私が発するなんて、以前なら信じられなかった。 「あ、お願い——そこ、ッ」  その感覚が頭のてっぺんまで達してしまったように感じて、私はほとんどわけもわからず、その言葉を発する。 「あああ、好き……ッ」  それとほぼ同時だった、彼が言葉にならない、獣のような叫びを発したのは。
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