レッドフード・グランプリ

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その光景を周囲一帯で最も高いビルの上から見下ろす長身の女性が一人。 「打ち首じゃ打ち首じゃ。あの小娘を早う捕らえて連れてこい。妾がこの手で刎ねてやろう」 赤と黒を基調としたボリュームのあるドレス、あちこちにハートのマークがあしらわれた衣装で身を包んだその女性。 精巧すぎる西洋人形の様な顔。それだけならば誰もが思わず見入ってしまう様な美女の顔で済むのだが、その口元に浮かぶ邪悪な笑みが却って人を寄せ付けない雰囲気を生んでいた。 ごてごてと装飾のついた巨大なティアラを被った女性の視線の先でトランプ兵の群れが獲物の追跡を中断し、その場でピタリと動きを止める。 「……ちっ」 「舌打ちだなんて貴方に似つかわしくないよ」 派手な衣装と煌びやかな装飾で強い存在感を放つ女性の傍らには、負けず劣らず派手なスーツに身を包んだホスト風の男が一人。 「ふん、あの小娘が思うたよりすばしこくてな。トランプ兵どもを遠隔操作できる範囲から逃げられよった」 「どうする? 追いかける? あの娘を倒さないと貴方の望みを叶えられないんじゃ」 「まあよい、どうせ一夜で終わる戦いでもないからのう。他の者に目をつけられても面倒じゃ、今宵は引き上げるとしよう」 不満気な表情を隠そうともしない美女は僅かに悩んだ素振りを見せたが、あっさりと赤い少女の消えた方角に世を向けた。 「じゃあここからは俺の時間だね。この街ナンバーワンホストが最高の時間をプレゼントしてあげるよ、女王陛下」 「妾の目と舌は肥えておるぞ。半端な余興なら打ち首じゃからな」 男がかしずき差し出した手を意外にもあっさりとった美女。 繁華街の明かりを見下ろしながら二人はその場を後にした。
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