レッドフード・グランプリ

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とある高校の教室、三人の学生たちが一人の机を囲んで放課後の自由を謳歌していた。 「はぁー空から女の子降ってこないかな。そんでもって謎の悪の組織とか秘密結社とか人外幽霊モンスターなんかに襲われて世界を守る為の戦いに巻き込まれたりしないかなあ」 中肉中背、特徴という特徴はややクセ毛気味の黒髪ぐらいしか挙げられない程には平凡な男子学生、桜辺紡(さくらべつむぐ)。 中心の机に頬杖をつき窓の外に視線を飛ばす彼の言葉に周囲の友人たちが口々に反応する。 「また始まったよ。桜辺君の妄想トーク」 牛乳瓶の底をそのままフレームにはめ込んだ様な眼鏡が目立つやや小柄な少年、博士則人(ひろしのりひと)。 「ひと昔前のアニメじゃあるまいし、妄想にしてもなんかイメージが古いんだよな」 浅黒い肌にかきあげた金髪が目を引くのは二人の友人たちより背の高い少年、木戸巧(きどたくみ)。 「大体もし降って来たとして数十キロの質量の塊をどうやって受け止めるつもり? 例えば3メートルの高さから40キロの女子生徒が落下してきたとしてかかる衝撃は――――」 「ストップストップ! 良いよ別に物理の計算は」 「桜辺君が非科学的な事言い出すから」 「ハカセのその何でもマジレスで返す癖やめた方が良いぞ、女子にモテないから」 「ハカセじゃない博士(ひろし)だよ。木戸君もその似合わない金髪やめた方が良いよ、見苦しいから」 「アあん!? このギンギンの金髪は俺の昔からのポリシーなんだよ! そうまるで気高いライオンの様に――――」 「何がポリシーだよ。お前中学時代はゴリゴリの陰キャで」 「だぁあああっやめろ桜辺! 人の昔の黒歴史を掘り起こすんじゃねえ! お前だって中学の頃から授業中妄想ばっかしてあろう事かそれを周囲に嬉々として語る典型的な非モテ男子選手権全国代表三連覇みたいな奴だったろうが!」 「大丈夫だよ木戸君。昔の黒歴史なんて気にしなくても」 「お、おお。まあハカセの言う通り過ぎた過去の過ちを気にし過ぎても仕方ないよな」 「君たち二人が中学でどんな陰惨な三年間を過ごしたかはともかく、木戸君今まさに現在進行形で黒歴史を精製してるもんね」 「俺だって中学の三年間で学んだんだよ。だからこうして妄想話をするのは同じ非モテ男子のお前らだけだと決めてるんだ」 「え。流石にこの金髪似非イキリヤンキーと一括りにされるのは少し、というかかなり納得いかないんだけど」 「こっちこそ妄想野郎にインテリ気取り瓶底眼鏡野郎と一緒にされるのは納得いかねえよ!」 がたた、と。 三者が同時に立ち上がり向かい二人の胸倉をつかみ合うという馬鹿のトライフォースが出来上がる。 「お前らー部活ないならさっさと帰れよー」   そこに教室の外を通りかかったクラス担任から一声がかかる。 「「「…………はぁ、帰るか」」」 これ以上馬鹿(みうち)どうしで貶め合っても誰も幸せにならない事に気づいたのか、各々自分の鞄を手に取りそそくさと教室を後にした。
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