レッドフード・グランプリ

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「ご馳走様ー」 桜辺家の食卓を一番最初に立ったのはいつもと変わらず長男の紡だった。 「紡ー、食べてすぐで悪いんだけどちょっとお使い行ってきてくれない?」 「えぇ?」 長男が一番先に席を立つ事を見越したうえで予めお使いを頼むつもりだった事が感じ取れる母の言葉に難色を示す紡。 「そんな大した量じゃないし近くのコンビニで全部揃うから」 「よしツグ兄、あたしハーゲンの苺で」 「おい待て妹、まだ行くとは言ってないだろ。というかアイスが欲しいならお前が自分で行けばいいだろ」 「何言ってるの。もう外は真っ暗なんだから縁ちゃん一人で行かせるのは危ないでしょ」 「じゃあ父さんに……」 「お父さんはもうお酒入れちゃってるから……。郵便ポストにしがみついたこの人を連れて帰るのは二度と御免だし」 「あーもう分かったよ」 とうとう観念したのか紡は玄関に向かいサンダルに足を通す。 「はいこれ買い物リストとお金。多めにあるからアイスでも何でも好きに買っていいから、お願いね」 「ツグ兄、ハーゲンの苺と抹茶忘れないでよね」 しれっとオーダーが増えているのを無視し、玄関のドアに手をかける。 「うあー暑ぃ」 冷房の効いた室内から一歩外に出た瞬間、思わず顔をしかめる程の熱気に全身を撫でられる。 その場で回れ右して我が家に駆け込みたい気持ちをぐっとこらえて最寄りのコンビニへと足を向けた。
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